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管理者の役割と監視・助言~外部の声をきくこと~《斉藤 秀之氏連載シリーズ vol.6》

2021.07.14 投稿

上場企業の執行体制に関するニュースを見る。コーポレート・ガバナンスコード、外部取締役、監査委員会等設置会社などキーワードから社会状況を鑑みている。共通して感じることは、代表取締役や執行を監視する体制をいかに重厚にするか、監視に限らず、役員指名や報酬決定においても内部のみで決めているわけではなく、外部の意見が反映された意思決定であると考察した。

なぜこうなるのか。役職が上がるにつれ、権限が強くなる。スピード感をもって事業執行する上では、役職者に権限を与え、自己の裁量権の範疇で的確に事業執行することは全く適正である。しかしながら、言葉は適切ではないが、ワンマン、暴君とか横暴と紙一重かもしれない。そうした意味では、事業執行を監視する内部、外部を重厚にすることで、そうした見方は否定され、組織の安定運営につながるのだろう。特に、大きな組織ほどそうした組織づくり重要となると考える。

我々、リハビリテーション部門、セラピスト部門の組織ではどうか。組織デザインとして、外部取締役、つまり外部の相談役や顧問、あるいはコンサルタントを置けるほど体力のあるセラピスト部門は多くないであろう。そうなると、官僚型組織に準じた組織づくりを目指すことになる。課長は現場指揮官、部長はデスクワーク中心に指示を出す、取締役は会社全体経営を考え、常務は会社とともに経済界全体を見る、という整理されたものを見たことがある。また、ワクチンをめぐる政策決定で、菅内閣総理大臣は、目標設定、進捗状況の確認、意思決定、が役割で5-6人の国務大臣に役割を分担している。

私は、セラピスト部門のトップが部長として位置されることが重要であると考える。その人の重要な役割は、目標設定、進捗状況の確認、意思決定である。部長は、経営者に一番近い存在であり、経営と紐付ける、経営方針が決まる前に意見交換できる、あるいは影響を及ぼす権利を有している可能性がある。だからこそ、患者だけを診ていることで部長は務まらないのである。これをフォロワーに委ねているようでは務まらない。いわんや、部下の足を引っ張るような指示を出す部長は論外である。

部長、あるいは管理者は、自己の意思決定をするための助言者やフォロワーをいかに位置づけるか、どの助言を重視するかが肝になろう。その助言者に、監視役的な助言者を位置付けることができるトップは、きっと任された船のかじ取りを正しい進路に進める可能性が高いはずである。

この進路をさらに間違いないものにするためには、自分磨きをすることが、まずは大事である。そのためには失敗してもよいので未知の経験をたくさんしておくこと、その経験を自分の血肉にしておくこと、その経験を次の未知に活かす癖をつけることなど、自分自身が努力すればできることはたくさんある。たくさんの読書をすることも大事であり、諸先輩との語らいも重要であろう。そうした意味では、やはり外部の助言者を持つことは有益だろうとなる。

執筆: 
斉藤 秀之(さいとう ひでゆき)
(筑波大学グローバル教育院教授)