マネジメントリーダーリレーインタビュー

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マネジメントリーダーリレーインタビュー

近森会グループの3病院リハビリテーション科長対談インタビューが実現です!【前編】

2021.09.17 投稿

回復期リハビリテーション病棟の基盤となった高知県高知市にある近森会グループ。
全国各地から、「近森のリハビリテーション」を学びたいというセラピストが集まるグループです。
高知駅前に急性期から回復期、在宅までの医療を展開し、地域の中核としての役割を担うグループ3病院のリハビリテーション科長の対談が実現しました!

セラピストリーダーの皆様にとって、かなりご興味のあるグループだと思います。たくさん伺いましたので、前編・後編でお伝えいたします。

前編は、3病院のご紹介と各科長の自己紹介、セラピストになろうと思った動機、そして、管理職としての軸にしていることを伺いました。

インタビューさせていただいたのは、こちらの科長の皆様です!

◎前田 秀博(まえだ ひでひろ)氏
  社会医療法人近森会 近森病院 リハビリテーション部科長 兼 理学療法科 科長
◎高芝 潤(たかしば じゅん)氏
  社会医療法人近森会 近森リハビリテーション病院 リハビリテーション部科長 兼 理学療法科科長
◎塩田 直隆(しおた なおたか)氏
  医療法人松田会 近森オルソリハビリテーション病院理学療法科 科長 理学療法士

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◎自己紹介と病院の特長をお話いただきました

前田 秀博(まえだ ひでひろ)氏
  社会医療法人近森会 近森病院 リハビリテーション部科長 兼 理学療法科 科長

<前田氏のご経歴>
聖マリアンナ医科大学病院での勤務を経て、1993年近森病院入職、2007年近森病院 理学療法科科長、2015年近森病院 リハビリテーション部副部長、2019年より現職となっています。資格は、介護支援専門員、専門理学療法士(神経、内部障害)、臨床栄養代謝専門療法士、3学会合同呼吸療法認定士、心臓リハビリテーション指導士、日本理学療法士協会指定管理者(上級)などを取得しているほか、心臓リハビリテーション学会の評議員なども務めております。

<所属の病院、リハビリテーション部の特徴>
近森病院は、高知県〔人口68.3万人〕高知市にあり、救命救急センターとして年間6412件(2020年)の救急搬入患者に対応しており、31診療科512床を有し、地域医療支援病院としての役割を担っています。また、自宅復帰をサポートする近森リハビリテーション病院(180床)・近森オルソリハビリテーション病院(100床)と連携して良質な医療サービスの提供を目指しており、近森会グループの中で急性期病院として機能しています。

ER(救急外来)や一般外来を経由して新規に入院される患者数は年間10638名(2020年)であり、高齢者が8割以上を占めています。また各病棟には、担当PTを含む多職種チームが配置され、全病棟の入院患者をモニタリングしています。典型的な病態に対しては、クリニカルパスに沿って入院治療が進められ、PT/OT/ST開始もこの中に計画として組み込まれています。クリニカルパスが適用されない場合には、各病棟担当の多職種チームで入院翌日に入院時カンファレンスを行ない、患者背景を勘案した各職種の方針を報告し、検討のうえ療養計画をチームで立案するよう関わっています。そうして患者個々の問題に対するアプローチが実践され、各診療科医師や専門チームによる回診や各病棟カンファレンスを通して計画の進捗状況が定期的にモニタリングされていく流れとなっています。

近森病院には早期リハビリテーションを実践するため、2021年8月現在PT71名/OT21名/ST10名が配置されており、新規入院患者の6割以上にリハ部として対応し、PT6465名/OT2311名/ST1181名に介入しています(2020年)。各病棟で開催される入院時カンファレンスには、病棟担当医師を含む多職種チームが参加して入院前の生活状況や病態に関する情報共有を図るとともに、適切なサポートを行なうための検討やスタッフ教育が継続的に実践されています。

患者をよりよい状態で転帰先へとつなぐためには、可及的早期の離床を推進する必要があり、リハビリテーション部では、4つのスローガン〔①効率的な業務展開と早期離床の促進、②廃用症候群発現の予防、③情報の共有化を実現、④多職種との連携強化〕を掲げ、体制上の工夫として、以下を実践しています。

○多職種との連携強化に向けて
①各病棟・診療科に担当となるPT/OTを配置
病棟で日々決まった顔ぶれが患者に関わり、コミュニケーションをとることで仲間意識も高まり、患者ケアに必要な情報交換も効率的となります。患者はどの程度のことができるのかを伝え、また患者が病棟でどのように過ごされているのかをより深く知る意味でも、病棟での業務が特に急性期では基本と考えています。

また、オーダーが出ていない患者の状況をも確認し,必要性がある場合には,早期介入を果たすため看護師と協力して主治医に働きかけるよう努めています。教育的な意味で、スタッフはある程度の期間ごとに担当となる病棟を交代し、現場を回る中でジェネラリストとして経験値を高められる体制としています。

②サテライト訓練室の設置
病棟を基点とした対応を強化することを目的として、1997年脳神経外科病棟にサテライト訓練室(39㎡)を設置し業務を展開してきた経緯があり、現在サテライト訓練室は5ヶ所となっています。病棟と訓練室が近くなることは、物理的な意味だけでなく、お互いの業務を知り、スタッフの相互理解を高めるうえでも有効と考えています。多職種間の仲間意識も強化され、チームアプローチの素地を固め、フットワークの良い業務展開においてもメリットが大きいと考えています。

○介入頻度の拡大に向けて
病院は24時間365日患者を受け入れているのに、リハ部は平日しかいないという体制では一貫性がありません。タイムラグなく多職種が介入できる体制が理想であると考えて、2002年から365日サービス提供体制を実践してきました。早急に解決すべき課題のある患者において、トレーニング効果を早く引き出すためにも,関わる頻度と時間帯は多い方が有利と考えています。そして、単に行為の自立や介助量軽減を目標とするのではなく、生きていく上で必要不可欠な行為を通じ、患者の『人間性』を尊重した幅広い支援を提供する視点を重視しながら関わっています。

■高芝 潤(たかしば じゅん)氏
 社会医療法人近森会 近森リハビリテーション病院 リハビリテーション部科長 兼 理学療法科科長

<高芝氏のご経歴>
1996年近森リハビリテーション病院入職。その後、急性期や院外出向の経験をへて2015年3月に近森リハビリテーション病院理学療法科科長、2019年3月より現職となっています。

業務内容としては、リハビリテーション部門の管理業務全般となっており、人事、及び業務管理が中心となっています。

資格は、介護支援専門員、専門理学療法士(運動器)、認定理学療法士(管理・運営)、3学会合同呼吸療法認定士などを取得しているほか、高知県理学療法士協会の生涯学習担当なども務めております。

<所属の病院、リハビリテーション部の特徴>
近森正幸(現理事長)が1984年に理事長に就任した際、「これからの時代にはリハが必要」と石川誠先生を高知に招聘し、1989年に近森リハビリテーション病院(145床)を開院しました。開院当初から厚生省にデータを送り続け、介護保険と回復期リハ病棟が2000年にスタートしました。その勢いに乗り2002年に180床に増床、増築、さらに2015年に現在の場所へ新築移転しました。

リハビリテーション部は、180床365日リハを実践するため、理学療法士65名、作業療法士50名、言語聴覚士28名が配置されており、四国でもトップクラスのスタッフ数を誇っています。その大所帯の管理構造として、患者対応を中心とした病棟管理の横糸と各科教育を中心とした部門管理の横糸のパラレル構造が特徴です。多職種でのチームアプローチを中心とし、各病棟配属下で臨床業務にあたっており、リハビリテーション部門の代表として療法士長が各ユニットに配属されています。

実際の患者対応はそれぞれの病棟でチームとして対応し、リハビリテーション部門としての治療の適正化や安全管理、感染管理など質の向上を目的とした教育は各科の部門がかかわっている状況です。教育管理については、各所属の主任・科長が責任者にあたります。臨床治療では、装具療法や電気治療、ロボットリハなど先進的なリハビリテーションを取り入れつつ、多職種による患者中心のチーム医療を実践しています。

■塩田 直隆(しおた なおたか)氏
  医療法人松田会 近森オルソリハビリテーション病院 理学療法科 科長 

<塩田氏のご経歴>
1995年に近森病院に入職。近森会グループでは急性期から維持期までの一連のリハサービスが提供されており、すべての部署で業務に携わり、2012年医療法人松田会近森オルソリハビリテーション病院に配属となり科長職として現在に至っています。資格は3学会合同呼吸療法認定士を取得しています。

<所属の病院、リハビリテーション部の特徴>
当院は整形外科の急性期医療を引継ぎ、患者さんを全人的に把握し、安心して楽しく暮らせる早期の社会復帰のための最適なリハビリテーション医療を提供することを理念に2007年10月に整形外科のリハビリテーションに特化した専門病院として開院しています。病床数は一般病床14床、地域包括ケア病床30床、回復期リハ病床56床の合計100床となっています。

リハビリテーション科では理学療法士31名 作業療法士8名の配属となっており、構成としては外来班とユニット別に分かれた入院班で業務に従事しています。スタッフルームはPTとOTの区切りはなく共有スペースで作業し患者さんについての情報共有などがしやすい環境となっています。

教育の一環としてグループ内の急性期病棟と脳血管中心の回復期病棟、訪問リハの異動を計画的に実施しています。

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◎理学療法士になられたきっかけを教えてください。

<前田科長>

母が看護師をしていて、理学療法士という仕事があることを高校生のときに聞いていました。良い仕事だと感じていたので、進路面談の時に担任の先生に相談したところ、先生の知り合いに理学療法士がいたので紹介していただき、現在に至ります。

<高芝科長>

学生時代にラクビーをしていて、怪我をして手術をした友人がリハビリをしたことを聞き、理学療法士の仕事を知りました。そのあと、自分の曾祖父が長期の入院をしていたこともあり、理解が深まりました。

もともと、何か資格を取りたいという気持ちが強かったので、漠然と理学療法士が良いなと思って選択しました。きっかけとして、スポーツから入る人も多いのですが、仕事にすることは難しいところはありますよね。

<塩田科長>

理学療法士という仕事は大学受験までは知りませんでした。

当時は、機械が好きだったので工業大学を目指して受験勉強をしていました。その時に母方の祖母が入院をしてリハビリしていた様子を見てこういう職業もあるのだなと思ったくらいでしたが、母親から人のためになる仕事という勧めと、県外に出るよりも母親の近くで貢献できる職業として、本命の大学がありながらも受験して合格できたのでそのまま進学し現在に至っています。

入学時は不安もありましたが体の構造や動きなどの知識を深めていくなかで、機械においてもどういう仕組みで動いているのかという視点からみれば、共通する部分もあり違和感なく勉学に励めました。

インタビューの様子です。 色々伺っているうちに盛り上がってきました!

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◎管理者として活動するとき、軸としていること、大事にしていることがあればお教えください。

<前田科長>

患者ファーストでいます。悩む時には、必ず患者さんにとってどうあるべきかを優先し、進むようにしています。次に、病院やスタッフですね。つい、職員中心の思考に陥りやすいのですが、そうならないように注意しています。

管理職になり色々と思うところがありますが、それぞれスタッフの話を聞いて尊重しなくてはいけないですよね。どうしても注意が多くなるのでできるだけ褒める、プラスのストロークを入れるようにしたいと考えています。

また、忙しいと話しかけにくい雰囲気を醸し出してしまいますが、それはまずいと思って反省することも多いです。いつでも相談しやすい雰囲気になることが組織としての風土になるかと思いますし、「お疲れさま!」と声をかけるだけでも日々積み重ねていって、心を病むスタッフが少しでも減れば良いと思っています。

<高芝科長>

管理職として軸にしていることは、基本的に諦めないことです。大きいところでいうと、オールフォーワン、ワンフォアオール(all for one, one for all)ですね。

一人でできることには限界があるので、管理職が何でもこなせるようにするのではなく、んなで一緒に成長していかないと実際に人は動かないと思っています。一人で何かをやらないよう、みんなで一緒にやることを心がけています。命令ではなく、お願い、依頼ですね。

<塩田科長>

私自身ためらうことが多いため、行動力を大事にしています。成果を出すためには色々な方法があると思いますが、失敗を恐れるあまり計画や準備に時間をかけ、慎重になりすぎ行動を躊躇するような状況にならないように心掛けています。行動を起こさない事には成果には繋がらないと思いますので、まずは行動を起こしそこから見えてくる問題点や改善点を繰り返し精査し実行するようにしています。

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臨床家として、管理者として第一線でご活躍の前田科長、高芝科長、塩田科長にお話を伺いました。

【後編】は、近森会グループのリーダー育成の根幹についてお話いただいております。
乞うご期待です!

編集長 下田静香