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誰のための仕組みか ~既存の概念、慣習、制度に振り回されない~《斉藤 秀之氏連載シリーズ①》

2021.01.13 投稿

 今月から、回復期リハビリテーション病棟協会PTOTST委員会委員長であり、筑波大学グローバル教育院教授の斉藤秀之氏の連載コラムがスタートします。
 臨床、教育、マネジメント等、多角的な視点からご執筆いただく予定です。
 セラピストの皆様、ご期待ください! (編集長)

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 年末にある方からお電話をいただいた。以前、日本看護協会で定められているリハビリテーション看護の認定コースをマネジメントしていた大学の教授からであった。この方は、私が退職した以前の所属施設に連絡をし、現在の所属施設を突き止めたようである。

 用件は、ご自身の退院後のリハビリテーションの依頼であった。なんと脳卒中を発症し、現在回復期リハビリテーション病棟に入院しているようである。退院に向けた調整が開始され、退院後の訪問リハビリテーションを進められたので、私に訪問リハビリテーションを依頼したいということであった。住まいが私が退職した病院の近隣であることが一番だからようである。

 なんと光栄なことか。

 それ以上に、入院中の病院から一生懸命私の探し当て、復帰に向けた賢明なセルフマネジメントに言葉を失った。さらに病状を聞き、後日、メールで詳細をいただく約束と、今後の方向性について私なりに検討することをお約束してお電話を切った。

 数日後、メールで詳細な病歴、病態の添付ファイルとともに、理学療法士に依頼して撮影した歩行の動画が貼り付けてあった。もちろん、私からも現在入院している病院の部門長に電話をして、事前に様々なお願いをした上でのことである。

 そのファイルの記述は、症例検討報告書のごとく詳細であり、動画も現状を把握するには十分なものであった。私は早速、ご本人に電話をして、私の所感をお伝えし、私がマネジメントできる受入良好な病院を調整していることをお伝えした。詳細は割愛するが、彼女からの「自分の気持ちを理解してもらえる言葉をもらい、勇気をもらえました」との言葉はお役に立てた思いである。

 ここ数年、同世代の同窓生からも様々な相談を受ける。股関節手術後でも生涯スポーツ活動を生きがいとしているが、どうも調子がよくないと同窓会の2次会にて相談を受けた。また、海外旅行中にご家族が脳卒中となり、病態と退院後の病院について途方に暮れていると国際電話で相談を受けた。いずれも専門家がしっかり関わっているのだが、ご本人がしっくりきていない様子が共通している。関わっている人は皆一生懸命に制度の中で最善を尽くしていると思う。しかしながら、満足していない現実、事実がある。

 前述の教授もそうであろう。私は理学療法士の資格を有しているが、現在の主たる職場は病院・施設ではない。しかしながら、既存の概念・慣習や制度からこぼれ落ちかかっている国民のお役に立てる活動ができるとつくづく思っている。

 当事者の社会復帰を諦めない必死さ、生き方の尊さとともに、そうした方を支援するために、専門家は既存の概念、慣習、制度に振り回される側ではなく、当事者のために制度を活用し、合わなければ創る側に位置する役割が重要であると痛感している。

執筆: 
斉藤 秀之(さいとう ひでゆき)
(回復期リハビリテーション病棟協会PTOTST委員会委員長 筑波大学グローバル教育院教授)