マネジメントリーダーリレーインタビュー

全国で活躍しているPT、OT、STの現役リーダーの皆さんの“今の声”をお届けします。
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マネジメントリーダーリレーインタビュー

医療法人春回会 井上病院 菊地 結貴さん〜子育てと管理職の両立のコツ〜

2021.11.07 投稿

長崎市にある医療法人春回会井上病院に所属される菊地結貴さんにインタビューいたしました。

菊地さんは、子育てをしながらも管理職としてご活躍中です。実際にどのような両立をしているのか…気になりませんか?

病院では、看護部の管理職は女性がほとんどですが、リハビリテ―ション部門での管理職はまだまだ比較すると少ない状況です。

菊地さんの管理職としての仕事と家庭の両立のコツを聴くことができました!

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◎菊池さんの所属の病院はこちら
医療法人春回会 井上病院

◎菊池さんのプロフィール
<ご略歴>
1995年 長崎大学医療技術短期大学 卒業
     国立療養所長崎病院 入職
1998年 社会医療法人 長崎北病院 入職
2000年 友愛病院 入職 2年後退職。その後、子育てに専念
2009年 社会医療法人 長崎北病院 再入職
2015年 社会医療法人 長崎北病院にて主任
2017年 社会医療法人 井上病院へ異動し、リハビリテーション科士長

◎所属の病院、法人のご紹介をお願いいたします。

当院は二次救急病院として地域医療を担う急性期病院です。

理念は

1.医療を通じ地域の方へ安心を提供すること
2.絶え間ない質の改善を行うこと
3.自分や自分の家族が受けたい医療を行うこと
4.働きがいのある明るい職場をつくること

です。

法人として、医療・介護を通して安心を提供しています。

◎所属の病院のリハビリテーション科の特長をお願いいたします。

当院のリハビリテーション科は、次の3つのことを掲げています。

・退院後の生活を見据えたリハビリテーションを提供する

・その人らしさを重視し、最大限の能力を発揮できるリハビリテーションを実践する

・住み慣れた地域で生活が継続できるよう、リハビリテーションにて支援する

◎菊地さんが理学療法士になられた動機、きっかけを教えてください。

私が中学生の時に母親がくも膜下出血になりました。治療の過程で、その時に初めてリハビリという仕事を知りました。当時は、漠然と「こういう仕事があるんだ」と思ったくらいでしたが。

でも、小さい頃から人の役に立つ仕事がしたいという気持ちは持っていたので、高校生になってから「リハビリの仕事をするためには、どういう学校に行ったら良いのだろう」と考え始め、この仕事を選びました。また、父親が、作業療法士と関わる職場にいたので、仕事について聞いていたことも影響していますね。

また、理学療法士になった頃は、スポーツ整形をしたいと思っていました。しかし、実習の時、脳梗塞になり、片麻痺で生活されている方のご自宅に訪問する機会があり、担当PTが患者さんの生活しやすいようアドバイスや環境を作っていく様子を見て、脳血管疾患のリハビリや回復期に関心を持つようになりました。

最初に思い描いていた理学療法士という職業とは違いますが、この仕事を始めてからは思った通りの仕事をしていると思います。

メンバーとの打合せの様子。中央の白衣を着ていらっしゃらうのが菊地さん。

◎リーダー(役職)になりたてのとき、壁にぶつかったこと、それをどのように克服したのかをお教えください。

主任になったときは、私の上に士長や科長がいたので、何かあれば報告をし、一緒に解決することができていました。ですので、そこまで「壁」と感じたことはありませんでした。

ただ、今、管理職という士長になったとき、どうしてもこちらの思いが伝わらない、わかってもらえないということを感じました。

例えば、その場では「ハイ」と理解したという返事をもらえるのですが、実際にはわかってもらえていないようだ、行動変容までいかない…ということがありました。

「どう伝えれば、行動変容につながるのか」と悩んだ時期があります。

また、「ここは言わなくてもわかっているはず」と思ったことが、「わかっていなかったんだ・・・言っておけばよかった・・・」ということもあり、当時の経験がとても勉強になりました。

とはいえ、私は周りの方々に恵まれていると思っています。それこそ、「壁」にぶつかったとき、どうしたら良いかと悩みながらも相談する相手が周りにいてくださって、その支えもあり、どうにか壁を乗り越えることができたと思っています。

◎リーダーとして、これだけは身に着けておいたほうがよい、経験しておいた方がよいと思うことをお教えください。

管理者という立場になると、どうしてもスタッフのダメなところ、できていないところばかり見えてしまいがちかと思います。

それでも、スタッフの良さを見つけようとすることは大事かなと思っています。どうしても、「ここがダメ」と言ってしまうのですが、そういう時でも、先に良いところを伝えるようにしています。伝え方の工夫はしたほうが良いと思います。

看護師の皆さんは、管理職としての様々な勉強するための講義がありますが、セラピストはやっと回復期リハビリテーション病棟協会でのセラピストマネジャーという認定の制度ができて広がってきていると思います。

私の場合は、たまたま行く機会があり学ぶことができましたが、現役の管理職でもそういうことを勉強しないまま管理職になっている方もいると思います。やはり、指導するスキルなど何かしらは学んだ方が良いですね。

◎子育てしながら仕事を続けられて、現在、士長としてご活躍ですが、女性管理職の働き方について、菊地さんなりに努力したこと、大変だったことをお教えください。

2人の子どもがいますが、上の子が生まれた時に一旦、仕事から離れ、小学生に入学するタイミングで復帰しています。その期間は子育てもしっかりしたいと思っていたので、自分の意思でそうしました。

子どもが小学生の頃は、子育てにかける時間のウエイトを置きました。子どもの成長とともに、仕事へのウエイトも重きが出てきました。自分なりに加減をつけたカタチですね

今の職場は、それを許していただいた職場でもあります。

これが、常に仕事のウエイトを多くする職場であれば、きつかったかなと思います。

◎子育てしながら仕事をするにあたり、気をつけていたことはありますか。

研修に行く回数は少ないにしても、勉強は続けていました。

子どもが小学6年生、中学3年生など(卒業年度)区切りの時は色々と大変ですが、その前後の学年であれば仕事にウエイトを置くことができると思い、行動しました。学会の発表や管理職としてのスキルを身に着ける研修など、負荷がかかることは、子どもたちに時間が取られそうではない時期に時間をかけるようにしていました。

去年は中学3年生と高校3年生でしたのでので、やるべき役割を粛々と実践していました。代わりに、その前の年は頑張って学会に参加していましたね。子育てはまだ続きますので、役割を実践しつつ、ステップアップについては調整していました。

学会発表の記念のお写真でしょうか。
常に学ぶ姿勢を忘れない菊地さんです(^^)/

◎士長に抜擢された時、どう思われましたか。

本音を言うと、士長をやりたいというタイプではありませんでしたが、周りを見て、なるしかないと思いました。

タイミングも良く、子育てが忙しい時ではなかったというのもあります。それなりに、自分のペースでできるかなという時期だったこともありますが、これが子育てでバタバタしている時期であれば、断っていたのかもしれません。

今になると、やってよかったとは感じますが、タイミングと人に恵まれているのだと思います。

理学療法士になりたての頃、勤務先のリハビリ医師に「いろいろな人に出会いなさい」と言われました。

私たちが若い頃は、遅くまで仕事するのが当たり前で、先生のところへ訪問される方とちょっとした症例発表などしていました。今でも、そこで出会った先生たちに支えられています。

◎仕事と家庭の両立(ワーク・ライフ・バランス)をするために、どのような工夫をされてきましたか。ママさんセラピストの皆さんへの応援メッセージをお願いいたします。

私の場合、3つあると思います。

1つ目は、仕事と家庭のそれぞれのウエイトをどちらに置くのか先を見越して「来年は仕事ができそう」とか、「来年は子どもに手がかかりそう」など考えながら計画立てるのが良いと思います。

2つ目は、全部、自分で背負いこまないのがいいですね。

後輩から、「自分が全部、家のことをしないといけないし、病院に来たら業務がこれだけあって大変だ」という悩みも聞いたことがあります。ある程度、子どもが成長してきたら、そこは子どもにしてもらったら良いと思います家庭でも仕事でも自分だけではなく、任せられることは任せていくことで、長く続けられるのだと思います。

家庭でも、何でもしてあげることが良いことかというと、そうではないですし、ある程度は自分でする時期があっても良いのかなと。

ゴミ捨て一つでもしていてくれたらありがたいと思いますし、それが、お手伝いではなく「これはあなたのお仕事ね」と、役割みたいな形でしてもらうことで、それが仕事になるのだと思います。

3つ目は、切り替えですね。仕事と家庭の切り替えをしっかりする方が、うまくいくかなと思います。わたしは車で通勤しているのですが、出勤途中と帰宅途中、車の中で考えることを切り替えるようにしています。

◎仕事もプライベートも含めて、これからの菊地さんの向かう先をお教えください。

今は、管理職業務のウエイトが高いですね。ただ、困っているスタッフがいると月に数回、臨床現場の仕事をすることもあります。やっぱり、臨床は楽しいです。

とはいえ、臨床だけをしたいかというとそうでもないですし、管理職をしながら、悩んでいる患者さんをみていくスタイルが良いかなとも思っています。

また、今後は在宅の仕事もしてみたいという気持ちがあるので、訪問リハには力をいれたいところです。他には心理学を学びたいと思っています。スタッフの想いを少しでも分かり合えるためにも学びたいと思っています。

◎最後に自分を元気にしたいとき、どんなことをされていますか。

どちらかというとアウトドアが好きで、登山やキャンプなどをしています。自然に触れることで英気を養い、元気にしています。

ご友人とのキャンプのご様子だそうです。真ん中が菊地さん。

最近は、子供がアウトドアに付き合ってくれないので、友達と行くようにしています。その時は、仕事と関係ない話が中心ですね。

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【インタビュー後記】

 菊地さんとの出会いは、回復期リハビリテーション病棟協会の管理職向け研修会でした。ご縁があって、5年以上のお付き合いになります。この度は、ママさん&管理職のお仕事でご多忙のところインタビューをお受けいただきました。

 子育てと仕事の両立は、その時の両立というように考えがちですが、菊地さんの場合は、長いスパンで仕事と子育てそれぞれにかける時間のウエイトの掛け方が長続きする両立のようですね。

 きっと、全国のママさんリーダーの皆さんの両立のヒントになったのではないかと思います。
 それにしても、学ぶ力を持ち続ける菊地さんに敬服です。

 菊地さん、ありがとうございました(^^)/

編集長 下田静香