セラピスト応援インタビュー

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セラピスト応援インタビュー

社会医療法人近森会管理部長 寺田文彦氏

2021.04.27 投稿

全国でも先駆的な取り組みで有名な社会医療法人近森会の管理部長である寺田文彦氏のインタビューが実現いたしました。
高知駅前に位置する近森会。ホームページのキャッチは「一歩先の医療、一つ先の未来」。急性期から回復期、そして在宅医療まで担う地域になくてはならない近森会。また、回復期リハビリテーション病棟の礎となったことも、当時の「一歩先の医療」だったのだと。
今回は、ご多忙の中、寺田管理部長に近森会の沿革、地域の医療環境における近森会の役割や取り組み、そして法人としての人材育成の考え方をお話いただきました。

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◎寺田管理部長の所属の法人はこちら
社会医療法人近森会

◎寺田管理部長のプロフィール
<現職>
社会医療法人 近森会 管理部長

大学ご卒業後、1999年7月に医療法人近森会(現 社会医療法人近森会)企画情報室にご入職、電子カルテ導入に携わる。2003年7月近森リハビリテーション病院事務長にご就任し、医療機能評価受審の事務局を担当される。
2004年9月に法人本部へ異動され、診療支援部長に就任、DPC(診断群分類別包括評価)の準備に携わる。
2010年4月より新本館建設5か年計画のプロジェクトの事務局をご担当。
2012年1月に近森病院の医療機能評価更新(Ver1.0)、2013年1月に特定共同指導の事務局などをご担当し、2015年4月より現職に至る。

<ご経歴>
1967(昭和42)年12月18日 高知県生まれ
1990(平成2)年 3月 中央大学法学部 法律学科 卒業
1999(平成11年)7月  医療法人近森会 近森病院 企画情報室 入職
2003(平成15年)7月  医療法人近森会 近森リハビリテーション病院 事務長
2004(平成16年)9月  医療法人近森会 近森病院 診療支援部長
2015(平成27年)4月  社会医療法人近森会 管理部長
2016(平成28年)10月 社会医療法人近森会 常務理事兼管理部長
2016(平成28年)10月 医療法人松田会 常務理事
2018(平成30年)3月  社会福祉法人ファミーユ高知 常務理事

◎法人のご紹介、現在の県内・地域における役割、最近の法人としてのお取り組み等をお教えいただけますか。

現在、近森会グループでは、法人全体で792床を営んでおり、3つの病院に分かれています。
社会医療法人近森会 近森病院は、救命救急センターや地域医療支援病院、管理型臨床研修病院であり、災害拠点病院にもなっています。高度急性期病棟、急性期病棟、地域包括ケア病棟があります。

寺田氏ご提供資料

また、近森リハビリテーション病院は全床回復期リハビリテーションの建物で、もともと厚生労働省で回復期リハビリテーション病棟としての施設基準を作るときのモデルとなった病院です。現在は、脳卒中、脊損などを中心に治療しています。

寺田氏ご提供資料

医療法人松田会 近森オルソリハビリテーション病院は近隣の病院にベッドを譲っていただいた病院となります。
近森病院で整形の手術が年間1400件ほどあり、複数病院に早期転院していましたが、紹介元に患者さんが戻らない弊害があり、近森会グループで回復期リハビリテーションの対応をした後で、かかりつけの診療所にお渡しできないかとずっと考えていました。
たまたま譲っていただける病院があり、こちらでは運動器の回復期リハビリを行っています。

在宅系もあります。
在宅総合ケアセンターでは、1つの建物に老健施設や訪問看護、居宅介護支援事業所などが集合して連携をとっていました。2000年に介護保険の先駆けとして始めた建物でしたが、介護系サービスは高知県でも周りの施設ができるようになったので廃止して、現在は訪問看護や訪問リハビリに特化しています。

寺田氏ご提供資料

社会福祉法人は高知県から移管を受けたもので、3障害、いわゆる身体や精神、知的障害者の社会復帰、就労支援の施設となっています。
かつての措置費制度でやっていた時代は終わり、障害を持ちながらでも、出来るだけ就労復帰できる支援をしています。
これらが、グループ全体の活動になります。

高知県は人口が68万人で、年間8,000人が自然減少しています。圏域としては東西に長く、医療圏が4つあります。中央医療圏に7割の病院と医療スタッフが集中しており、それ以外は医療圏ごとに4万~8万人程度の人口しかいなく、今後20年間で労働生産人口が半減する地域です。

昨今、「病床の機能分化と連携」と言われますが、高知県は「機能分化と淘汰」の時代に入っています。

寺田氏ご提供資料

◎在宅リハビリに関しては、近森会でも進めていかれるのでしょうか。

当院の管轄である中央医療圏の範囲だと、退院した先にリハビリの機能がなければ、訪問リハや訪問看護へ行くことはあります。ただ、医療圏をまたいで2時間かけて往復することは難しいです。
介護保険は市町村単位になりますので、市町村の方でなるべく在宅に向けた看護師の要請や薬剤師、管理栄養士をという話になると思うのですが、今後は様々な職種が在宅に入って行く必要があると考えています。

高知県は人口当たりでベッドが非常に多く、全国平均の2倍あると言われています。特に、療養病床は3倍くらいあります。
2025年には急性期病床だと2000床多いとされていますが、地域包括病床が1000床足りないので、そちらへ移すことになります。しかし、それでも残りの1000床は余ってしまいます。
高齢化と人口減少、ベッド過剰が同時に進んでいる高知県が、地域医療計画のモデルを作らないといけない状況で、全国から注目されていると思います。在宅への推進は、ますます重要視されると思います。

寺田氏ご提供資料

◎チーム医療についてのお考えをお教えください。

当院はチーム医療の中でも、病棟常駐型のチーム医療をやっていまして、各スタッフが病棟専属で、お互いに情報共有を行い、各職種の目線で医療を展開しています。

よく、チーム医療の概念をきかれるのですが、各職種の仕事を分解し、やっていることを書き出しながら仕事を割り振って、今のチーム医療の形になってきたというイメージです。

チーム医療を行う上で、最近の新人は多様性がありますね。
昔は入って何年かは、その組織に従って馴染んでゆく形態でした。しかし、今は経験値こそ少ないのですが、早くから個人の意見を持っており、何よりも考え方に多様性があります。それを認めた上で1つの方向性を示してゆく必要があります。コ・メディカルの管理者(リーダー)が一番困っているところは、そこではないかと考えています。

繰り返しますが、いろんな意見を聞いてあげた上で、全体で進むべき方向性の指示を出してあげる必要があります。今は医療現場も転換期ですので、すべての指示を末端まで浸透させることは難しい時代になりました。一つの部署で50人程度ならトップダウンで監視することも可能ですが、職員が2,000人もいますし、人数の多い看護部やリハ部を中心に、それぞれのスタッフが自立・自動しなければ、現場の治療スピードが上がらず、ひいては労働生産性の向上に繋がりません。

高度急性期のステージですと、11日ほどで次のステージへ移っていくことになるので、若いスタッフにはまず、各部署で標準化したルーチン業務を覚えて欲しいですね。
やはり、患者さんをみて経験値を積んでいかないと自立・自動はできません。自分で患者さんをみて介入することを繰り返してもらい、専門性をあげてゆきます。専門性を上げていくと暗黙知、経験値のようなものが生まれてくるので、それを新人で入ってくる若手スタッフに実行して欲しいと思います。

寺田氏ご提供資料

今年は、コロナ禍で病院実習をほとんど受けずに入ってくる世代です。新人研修を例年以上に丁寧に始めることで、普段の研修とは違う形になると思いますが、逆に、コロナ世代に特有の、徹底した感染管理を指導された世代として頼もしく思います。

◎マネジメント研修についてのお考えをお教えください。

当院はこれまで、リーダー研修と主任研修、管理職研修を行ってきました。
医療業界に精通した講師がおられ、業界の先行きや医療業界で働くにあたってのイメージなどをご講義いただき、各研修の階層ごとに意見をフィードバックしていただくという方法でした。

また、航空会社の元客室乗務員だった講師からは、全国規模で他の研修をされていることもあり、他病院での具体的な事例もお話しいただきました。ゆとり世代に対しても、厳しい研修をしていただき、医療業界で働くとはこういうものだという基礎を教えて頂きました。

ただし、今回はコロナ禍が続き、オンライン研修が必要となりました。
時代に合わせて、新しい研修方法も考えていかないといけないと思っています。

◎リーダー育成という視点で課題があればお教えてください。

ゆとり世代の末期は個々の能力差が非常に大きいと思います。できる子とできない子の見極めを早めにしてあげる必要があります。
中学から大学受験まで競争がなく育った世代です。一方で、私たちやその少し下の世代では、友達が試験に落ちないと自分は受からないという世代でした。それが当たり前で来た世代が上司となり、部下はほとんど競争がなく、みんなで一緒に勉強してみんなで試験に受かろうという世代を教育する立場にいます。ただ、若いスタッフは横の情報網がすごく発達していて、みんなで一致団結して行動する形を取ります。あまり積極性がないのですが、上手く長所として捉えてもらいたいなと思います。

もう一つは、10年目以降はオールマイティーな管理職(マネージャー)になるケースと専門技術を突き詰める2つの方向があると思います。どの職種もそうですが、専門看護師や認定看護師といった各学会の専門資格を取得し、プロフェッショナルとして進みたいという人も出てくるでしょう。

だんだん年齢を重ねていくと、どちらの方向が向いているのか各自で考える時期があります。そのどちらも目指さない。つまり、何処かで成長が止まって中途半端になっている、異動もなくてこのまま定年までいけたら良いと思う人は、将来の病床削減の中では、医療現場で働けなくなってしまいます。中途半端なスタッフが仕事を失う時代がくると思います。

寺田氏ご提供資料

高度急性期、急性期病床は、今後治療する患者が限定されてゆきます。計算をすればどの職種がどれくらい必要かは分かってきます。現場は専門性が非常に高いですし、そうでなければ、チーム医療の中でやっていけません。その中で、若い世代がドロップアウトしていくということは実際にあると思います。

◎兼ね備えて欲しい視点などあればお教えください。

とにかく、高度急性期の世界は高度かつ重度医療を行います。専門性の高いスタッフと高度設備がないと治療行為ができません。

スタッフの質を担保していくために研修や教育があるので、その世代にあった教育の仕方を取り入れながら、全体としてきちんと質の確保をしていく。そこに関してはとにかく意識して、対応して欲しいと思います。

◎リーダーや管理職として、身につけてほしいスキルがあればお教えください。

バランス取れた人間性を持ち合わせていること。
部下よりいろんな相談を受けることになるので、自分さえ頑張っていれば良いという気持ちでは上手くいきません。主任は、それぞれの現場における実務リーダーですので、現場がうまく稼働する目線を持ち続けて欲しいと思います。

管理職になってくると、部署をまたいでいろんな連携が必要になります。技術指導はもちろんのこと、他部署との調整がうまくできる人が向いていると思います。

◎応援メッセージをお願いいたします。

医師の働き方改革につながるのですが、ドクターの仕事は早期に診断して根本治療をすることです。いろんな周辺業務があって資格上、全ての仕事ができるますが、とにかく数多くの患者さんをみることが最優先です。
ドクターが病院内のどこで勤務しているかと言えば、オペ室や内視鏡センター、カテ室やICUなどであって、一般病棟は朝回診して問題ないか確認をするくらいです。そのため、一般病棟はコ・メディカルが主力であり、退院までの道筋を作ることになります。

各コ・メディカルのステージで活躍の場は沢山あると思いますので、実力をつけて活躍できる場を広げて欲しいと思います。病院によってはドクターが仕事を渡してくれない場合もありますが、当院ではそういうことは一切ありませんので、チーム医療に参画できて、職種ごとの視点(看護学的、薬学的、栄養学的など)を広げて欲しいと思います。

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【インタビュー後記】

 寺田管理部長とお会いしたのは、10年ほど前だったかと思います。今回、寺田管理部長からお話がありましたとおり、近森会は高知県内での急性期医療から回復期、在宅という医療だけではなく、福祉の分野も手掛けていらっしゃいます。高知県内でこれだけの職員を雇用している法人はなく、県内の重要な雇用を担ってもいます。医療福祉だけではなく、雇用という点でも大きな役割のある法人だということを改めて実感いたしました。

 また、人材育成においても、長年の管理部門からでの視点で取り組まれていること、具体的にお話いただきました。こうして発展してこられた理由がわかったように思います。

 この度は、お忙しいところインタビューをお受けいただきありがとうございました。
 また、本インタビューにあたり、近森会総務課の小松さん、岡崎さんにも感謝申し上げます。

編集長 下田 静香