マネジメントリーダーリレーインタビュー

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マネジメントリーダーリレーインタビュー

脳神経センター大田記念病院 野村 和正さん

2020.12.28 投稿

 広島県福山市にある社会医療法人祥和会脳神経センター大田記念病院の理学療法士 野村和正さんにインタビューしました。
 臨床現場とマネジメントの両立を常にい考えつつも、真向正面からマネジメントに向き合う野村さん。病棟立ち上げから運営までの他職種との関係性やリーダーとしての軸になることなどお話いただきました。

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◎野村さんの所属の病院はこちら
社会医療法人祥和会脳神経センター 大田記念病院

◎野村さんのプロフィール
社会医療法人祥和会脳神経センター大田記念病院の回復期リハビリテーション課主任。
2004年に理学療法士の資格を取得。その後、他院に勤務の後、2017年に現在の職場に入職。2011年から現職。 

◎所属の病院、法人のご紹介をお願いします。

 岡山県に隣接する広島県最東部に位置する政令指定都市で、診療圏内の人口は約52万人、広島県総人口の約19%を占めます。 病院の特徴は、脳卒中と脳血管疾患の専門病院、神経難病専門病院、脊椎・脊髄疾患の専門病院で、その他診療科は多数あります。
 二次保健医療圏での位置づけは、脳卒中では7割の患者様が入院、神経疾患の患者様は6割が当院へ入院され、年間1200件以上の手術も施術しています。医療圏内の脳卒中救急患者はほぼ全てが当院へ搬送(脳卒中の患者数は全国6位)されており、地域にとって必要不可欠なインフラ的病院となっています。

 祥和会グループとしては、超急性期から救急、急性期、循環器、地域包括ケア病棟、回リハ病棟、通所リハビリテーション、訪問看護ステーション、クリニック、地域密着型特別養護老人ホームがあり、急性期から在宅までサポートする体制を整えています。

 その他、福山市は地域の特性として塩分過多となりやすい為、企業と共同で減塩の取り組みとして、だしパック・だしつゆを企業と共同開発しています。

企業と共同開発した「だし」を紹介する野村さん

◎リハビリテーション部のご紹介(力を入れていることやチーム活動の様子等)をお願いします。

【部門の構成と提供しているリハビリテーション】
 セラピストは総勢30名で、約6割が女性、約6割が20代、3割が30代で、他院と比較すると女性が多く若手スタッフで構成されています。
 女性が多いのは、有給が取りやすいなどフォロー体制が整っているからだと考えられます。セラピストは、急性期リハビリテーション課と回復期リハビリテーション課のどちらかに所属しています。
 患者様に対して、入院リハ・外来リハ、脳卒中・整形から心臓リハビリテーション、スポーツリハ(主に野球)、ボトックス、電気刺激など様々な機器も積極的に使用しリハビリテーションを実施している。 

【教育体制】
 6年目までに臨床業務を行えて、学生や後輩の指導ができるセラピストになることを目標に掲げています。指導項目や内容のばらつきを最小限に抑えられるように、診療に必要な知識・技術をチェックリストを使用し、指導者もベテラン・若手の2名体制で担当するなど教える側も負担が少ないよう工夫しています。

◎野村さんが、理学療法士になられた動機、きっかけをお教えください。

 高校1年に膝を手術し、リハビリを知ることになります。高校2年で理学療法士を目指すことにしました。
 高校時代から憧れた仕事で養成校に入学しましたが、実習を通じて理想と現実のギャップに悩み、2年間休学をしました。しかし、そこで休学して、じっくり向き合う時間があったことが逆に糧となり、今に至っています。

◎リーダー(役職)になりたてのとき、壁にぶつかったこと、それをどのように克服したのかをお教えください。

 その当時は、壁を壁とも認識できていなかったと思います。セラピストは、学内教育や卒後教育でセラピストとしての勉強をしていますが、管理学・教育学・組織学などの管理者としての教育は受けていません。職場での管理職研修も年に半日程度受けるぐらいです。
 当時、セラピストとしての臨床業務9割、管理業務1割の割合で、片手間で管理者を始めました。
 今思うのは、やはり、管理者として必要なことはみっちりと勉強した方が良いと思います。患者様が相手であれば何が原因でどうしたら良いのか考えるのは得意であっても、それが人材育成となった途端に組み立てることが苦手になってしまうのです。患者様を通してやっていることをそのまましたら良いのだと今になって感じています。

◎新病棟立ち上げから携わったと伺っております。その時、大変だったこと、その時のスタッフを動かすときに苦労されたこと、反対に今になって「あのときの頑張りが糧になっている」などのエピソードをお聞かせください。

 うまくやるには事前にテーマを伝えて、時間のあるときにメールでやりとりも無理という方もいるので、立ち話程度に話したのをこちらで準備して話し合いをするとか、動ける人が動くしかないかなと思っています。当時の所属長からは、「お前一人でやるな」と言われますが、動かなかったら進まないし・・・というところで葛藤もあります。
 同じリハビリテーション課でもPT・OT・STの部門毎にベストな考えや意見は違います。それが、他部門ならなおさら違っています。着地点を早く調整するのが難しかったです。特に、現場の管理者は実務をしているので話し合う時間調整と期日までに終わらせることが難しかったです。また、看護師とセラピストは働き方が異なりますので、決まった時間にできないことも結構ありました。
 その中で、どこまで先頭で引っ張るか、どこからバックアップの役目をおこなうか等、リーダーシップの取り方を適宜変えていくことの必要性を体感しました。
 現役バリバリのリハ専門医と1日中開設準備室で作業していたので、
  ①取り組みをシステムにいかに落とし込んで業務をデザインするか、
  ②スタッフや退院支援の進捗をいかに管理・教育できるシステムにしておくか、
など、担当者任せにしないシステムづくりが大切だと思いました。結果として、複数人で患者様の退院支援をよりベストな方向で探していった方が良いという結論に至りました。
 とはいえ、システムを動かすのは人なので、結局システムを整備しても人の育成、フォローをしないと質向上はないんだなということも体感しました。

◎日々奮闘のことと思いますが、よりよいチーム運営において、同僚やスタッフのとかかわりのポイントや工夫して いることがあれば、お聞かせください。

 ①片手間に聞かない
 ②相手と向き合う
 ③こちらから声をかける
 ④相手を想う
 ⑤責任の所在を明確にしておく

 の5つでしょうか。

◎野村様がリーダーとして活動するとき、軸としていること、大事にしていることがあればお教えください。

 山本五十六の言葉ですね。口先だけの管理者はすぐバレます。実はみんなよく見ています。分からないことでも一緒に悩んで、調べて、一緒に臨床することが大事だと思います。
 また、強すぎる責任感、当事者意識を持たないことも必要だと思います。

◎今後、セラピストとして、リーダーとしてどのようになりたいのか、描いていることをお聞かせください。

次の2つです。
 ①人付き合いができる理学療法士リーダー
 ②最善の治療結果を出せる理学療法士

◎最後に、自分を元気にしたいとき、どんなことをされていますか。  

 まずは、釣り、ゴルフ、ランニング。
 休みの前の日は必ず釣りに行き、月に1、2回はゴルフ、そして週4日は夜に走っています。じっとしているのが苦手なので、常に動いていますね。

 2つ目に、「頼れる人に弱音を言う」です。今までは家に帰っても悶々と考えながら、悪い流れで過ごしたので今はすごく楽です
 3つ目は、「臨床現場に立つ!!」です。人付き合いができるセラピストになりたいと思っています。要するに、機械的ではなく、患者様や後輩と話ができ、なおかつ結果が出せる理学療法士になりたいという思いと、教育者でありながら管理者でもあるという立場になれるよう自分の幅をもっと広げたいと思っています。

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【インタビュー後記】
 リーダーとしてのご自身の行動指針や軸をもって現場マネジメントに取り組まれている野村さんでした。
 臨床も大切にしながら、マネジメントにも手を抜かない姿が手に取るようにわかりました。臨床との両立に悩むセラピストの皆さんも多いかと思いますが、野村さんの考え方も大変ご参考になるのではないでしょうか。
 野村さん、お忙しところインタビューをお受けいただきありがとうございました!