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原麻衣子のコラム「ヒトコトワリ」vol.1〜成功体験に囚われていませんか?〜

2022.04.17 投稿

人事アドバイザーの原麻衣子です。

今回から「ヒトコトワリ」と題して、コラムを綴っていこうと思います。
「ヒトコトワリ」と名付けた理由は…

組織を運営していくためには、様々な物や事柄が関わってきます。運営資金であるお金はもちろんのこと、どうやって患者さんや利用者さんに施設のことを知ってもらうのか、施設としての強みは何だろうと悩みは尽きないわけですが、ここでは「人」に焦点をあてた内容を綴っていく予定です。

なかなか思うように動いてくれないのが人の常。リーダーとして、どのような働きかけをするのかが大事になってくるわけですが、冷静沈着に理論(コトワリ)だけで上手くいくものではありません。そこには、人(ヒト)が動くための動機付けや気持ちも同時に汲み取っていくことが求められます。

「ヒトコトワリ」には、人を動かすために必要な客観的な視点と気持ちを動かす仕組みについて両面からお伝えすることができればという願いを込めています。楽しみながら読んでいただければと思います。

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さて、新年度が始まりました。私自身の生活にあまり変化はないのですが、新入社員と思しき人が街中で真っ新なスーツに身を包んでいる姿を見かけると、何だかこちらまで新鮮な気分になってくるから不思議なものです。

我が家の子ども達も、無事に進級することができました。新学期早々、数多くのお知らせが記載されたプリントを持ち帰ってくるのですが、その中に「体操服販売の案内」についてのプリントがありました。これまで、学校で着用する体操服と言えば、長女のお下がりを次女に着てもらっていたので、今回もそうしようと考えていました。

しかし、「体操服をどうしてもあげたくない。」と長女が言い出し、ついには泣き出してしまったのです。ある程度、泣き止んで落ち着いた頃に改めて理由を聞いてみると、「この体操服には思い出がたくさんあるから、小さくなっても手元に置いておきたい。」とのこと。私はどちらかと言うと、思い出の品をとっておかないタイプなので、そこまで考えが至らなかったわけです。

さて、長女の場合は体操服というモノに対しての思い入れだったわけですが、これが出来事や経験だったとしたらどうでしょうか。

私の場合、モノには執着することはありませんが、製薬会社に在籍していた時に売上を伸ばした経験や、3か月寝ずに勉強して受かった公務員試験での成功体験は忘れられません。その頃と比較してしまうことは少なくありませんが、ここで気をつけなくてはならないのが『成功の囚人』になっていないかということです。

成功の囚人とは、これまでの成功した経験に囚われてしまい、行動や考え方が凝り固まってしまった状態を指します。上手くいった過去の経験があるので、新しい考えを取り入れにくく、自分のやり方や考えが一番だと思い込んでしまうのです。

私たちは、無意識のうちにこのような状況に陥ってはいないでしょうか。4月は新入職員が入ってきますし、人事異動もあり、新しい考えや価値観に触れる機会が多くなります。その中には、仕事の改善につながるようなヒントが隠されていることも少なくありません。

時に、これまでの成功体験が新しい考えや価値観を阻んでしまうことがありますが、とても勿体無いことだと思っています。できるだけ周りの声に耳を傾け、自分自身の過去の成功体験に囚われすぎないように心がけるだけでも違うと思うのです。やがて、それがより良い仕事の仕方や組織づくりにつながっていくのだと考えています。

■執筆:原麻衣子
株式会社エイドドア人事アドバイザー

北海道札幌市出身。北海道大学卒。大学卒業後、外資系製薬会社を経て、公的病院で人事労務等を担当。その後、病院、クリニック、介護施設を中心に人事制度や評価制度の導入・運用コンサルティングや研修講師として活動している。

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