回復期リハビリテーション病棟の基盤となった高知県高知市にある近森会グループ。
全国各地から、「近森のリハビリテーション」を学びたいというセラピストが集まるグループです。
高知駅前に急性期から回復期、在宅までの医療を展開し、地域の中核としての役割を担うグループ3病院のリハビリテーション科長の対談が実現しました!

セラピストリーダーの皆様にとって、かなりご興味のあるグループだと思います。たくさん伺いましたので、前編・後編でお伝えいたします。

前編は、3病院のご紹介と各科長の自己紹介、セラピストになろうと思った動機、そして、管理職としての軸にしていることを伺いました。

インタビューさせていただいたのは、こちらの科長の皆様です!

◎前田 秀博(まえだ ひでひろ)氏
  社会医療法人近森会 近森病院 リハビリテーション部科長 兼 理学療法科 科長
◎高芝 潤(たかしば じゅん)氏
  社会医療法人近森会 近森リハビリテーション病院 リハビリテーション部科長 兼 理学療法科科長
◎塩田 直隆(しおた なおたか)氏
  医療法人松田会 近森オルソリハビリテーション病院理学療法科 科長 理学療法士

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◎自己紹介と病院の特長をお話いただきました

前田 秀博(まえだ ひでひろ)氏
  社会医療法人近森会 近森病院 リハビリテーション部科長 兼 理学療法科 科長

<前田氏のご経歴>
聖マリアンナ医科大学病院での勤務を経て、1993年近森病院入職、2007年近森病院 理学療法科科長、2015年近森病院 リハビリテーション部副部長、2019年より現職となっています。資格は、介護支援専門員、専門理学療法士(神経、内部障害)、臨床栄養代謝専門療法士、3学会合同呼吸療法認定士、心臓リハビリテーション指導士、日本理学療法士協会指定管理者(上級)などを取得しているほか、心臓リハビリテーション学会の評議員なども務めております。

<所属の病院、リハビリテーション部の特徴>
近森病院は、高知県〔人口68.3万人〕高知市にあり、救命救急センターとして年間6412件(2020年)の救急搬入患者に対応しており、31診療科512床を有し、地域医療支援病院としての役割を担っています。また、自宅復帰をサポートする近森リハビリテーション病院(180床)・近森オルソリハビリテーション病院(100床)と連携して良質な医療サービスの提供を目指しており、近森会グループの中で急性期病院として機能しています。

ER(救急外来)や一般外来を経由して新規に入院される患者数は年間10638名(2020年)であり、高齢者が8割以上を占めています。また各病棟には、担当PTを含む多職種チームが配置され、全病棟の入院患者をモニタリングしています。典型的な病態に対しては、クリニカルパスに沿って入院治療が進められ、PT/OT/ST開始もこの中に計画として組み込まれています。クリニカルパスが適用されない場合には、各病棟担当の多職種チームで入院翌日に入院時カンファレンスを行ない、患者背景を勘案した各職種の方針を報告し、検討のうえ療養計画をチームで立案するよう関わっています。そうして患者個々の問題に対するアプローチが実践され、各診療科医師や専門チームによる回診や各病棟カンファレンスを通して計画の進捗状況が定期的にモニタリングされていく流れとなっています。

近森病院には早期リハビリテーションを実践するため、2021年8月現在PT71名/OT21名/ST10名が配置されており、新規入院患者の6割以上にリハ部として対応し、PT6465名/OT2311名/ST1181名に介入しています(2020年)。各病棟で開催される入院時カンファレンスには、病棟担当医師を含む多職種チームが参加して入院前の生活状況や病態に関する情報共有を図るとともに、適切なサポートを行なうための検討やスタッフ教育が継続的に実践されています。

患者をよりよい状態で転帰先へとつなぐためには、可及的早期の離床を推進する必要があり、リハビリテーション部では、4つのスローガン〔①効率的な業務展開と早期離床の促進、②廃用症候群発現の予防、③情報の共有化を実現、④多職種との連携強化〕を掲げ、体制上の工夫として、以下を実践しています。

○多職種との連携強化に向けて
①各病棟・診療科に担当となるPT/OTを配置
病棟で日々決まった顔ぶれが患者に関わり、コミュニケーションをとることで仲間意識も高まり、患者ケアに必要な情報交換も効率的となります。患者はどの程度のことができるのかを伝え、また患者が病棟でどのように過ごされているのかをより深く知る意味でも、病棟での業務が特に急性期では基本と考えています。

また、オーダーが出ていない患者の状況をも確認し,必要性がある場合には,早期介入を果たすため看護師と協力して主治医に働きかけるよう努めています。教育的な意味で、スタッフはある程度の期間ごとに担当となる病棟を交代し、現場を回る中でジェネラリストとして経験値を高められる体制としています。

②サテライト訓練室の設置
病棟を基点とした対応を強化することを目的として、1997年脳神経外科病棟にサテライト訓練室(39㎡)を設置し業務を展開してきた経緯があり、現在サテライト訓練室は5ヶ所となっています。病棟と訓練室が近くなることは、物理的な意味だけでなく、お互いの業務を知り、スタッフの相互理解を高めるうえでも有効と考えています。多職種間の仲間意識も強化され、チームアプローチの素地を固め、フットワークの良い業務展開においてもメリットが大きいと考えています。

○介入頻度の拡大に向けて
病院は24時間365日患者を受け入れているのに、リハ部は平日しかいないという体制では一貫性がありません。タイムラグなく多職種が介入できる体制が理想であると考えて、2002年から365日サービス提供体制を実践してきました。早急に解決すべき課題のある患者において、トレーニング効果を早く引き出すためにも,関わる頻度と時間帯は多い方が有利と考えています。そして、単に行為の自立や介助量軽減を目標とするのではなく、生きていく上で必要不可欠な行為を通じ、患者の『人間性』を尊重した幅広い支援を提供する視点を重視しながら関わっています。

■高芝 潤(たかしば じゅん)氏
 社会医療法人近森会 近森リハビリテーション病院 リハビリテーション部科長 兼 理学療法科科長

<高芝氏のご経歴>
1996年近森リハビリテーション病院入職。その後、急性期や院外出向の経験をへて2015年3月に近森リハビリテーション病院理学療法科科長、2019年3月より現職となっています。

業務内容としては、リハビリテーション部門の管理業務全般となっており、人事、及び業務管理が中心となっています。

資格は、介護支援専門員、専門理学療法士(運動器)、認定理学療法士(管理・運営)、3学会合同呼吸療法認定士などを取得しているほか、高知県理学療法士協会の生涯学習担当なども務めております。

<所属の病院、リハビリテーション部の特徴>
近森正幸(現理事長)が1984年に理事長に就任した際、「これからの時代にはリハが必要」と石川誠先生を高知に招聘し、1989年に近森リハビリテーション病院(145床)を開院しました。開院当初から厚生省にデータを送り続け、介護保険と回復期リハ病棟が2000年にスタートしました。その勢いに乗り2002年に180床に増床、増築、さらに2015年に現在の場所へ新築移転しました。

リハビリテーション部は、180床365日リハを実践するため、理学療法士65名、作業療法士50名、言語聴覚士28名が配置されており、四国でもトップクラスのスタッフ数を誇っています。その大所帯の管理構造として、患者対応を中心とした病棟管理の横糸と各科教育を中心とした部門管理の横糸のパラレル構造が特徴です。多職種でのチームアプローチを中心とし、各病棟配属下で臨床業務にあたっており、リハビリテーション部門の代表として療法士長が各ユニットに配属されています。

実際の患者対応はそれぞれの病棟でチームとして対応し、リハビリテーション部門としての治療の適正化や安全管理、感染管理など質の向上を目的とした教育は各科の部門がかかわっている状況です。教育管理については、各所属の主任・科長が責任者にあたります。臨床治療では、装具療法や電気治療、ロボットリハなど先進的なリハビリテーションを取り入れつつ、多職種による患者中心のチーム医療を実践しています。

■塩田 直隆(しおた なおたか)氏
  医療法人松田会 近森オルソリハビリテーション病院 理学療法科 科長 

<塩田氏のご経歴>
1995年に近森病院に入職。近森会グループでは急性期から維持期までの一連のリハサービスが提供されており、すべての部署で業務に携わり、2012年医療法人松田会近森オルソリハビリテーション病院に配属となり科長職として現在に至っています。資格は3学会合同呼吸療法認定士を取得しています。

<所属の病院、リハビリテーション部の特徴>
当院は整形外科の急性期医療を引継ぎ、患者さんを全人的に把握し、安心して楽しく暮らせる早期の社会復帰のための最適なリハビリテーション医療を提供することを理念に2007年10月に整形外科のリハビリテーションに特化した専門病院として開院しています。病床数は一般病床14床、地域包括ケア病床30床、回復期リハ病床56床の合計100床となっています。

リハビリテーション科では理学療法士31名 作業療法士8名の配属となっており、構成としては外来班とユニット別に分かれた入院班で業務に従事しています。スタッフルームはPTとOTの区切りはなく共有スペースで作業し患者さんについての情報共有などがしやすい環境となっています。

教育の一環としてグループ内の急性期病棟と脳血管中心の回復期病棟、訪問リハの異動を計画的に実施しています。

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◎理学療法士になられたきっかけを教えてください。

<前田科長>

母が看護師をしていて、理学療法士という仕事があることを高校生のときに聞いていました。良い仕事だと感じていたので、進路面談の時に担任の先生に相談したところ、先生の知り合いに理学療法士がいたので紹介していただき、現在に至ります。

<高芝科長>

学生時代にラクビーをしていて、怪我をして手術をした友人がリハビリをしたことを聞き、理学療法士の仕事を知りました。そのあと、自分の曾祖父が長期の入院をしていたこともあり、理解が深まりました。

もともと、何か資格を取りたいという気持ちが強かったので、漠然と理学療法士が良いなと思って選択しました。きっかけとして、スポーツから入る人も多いのですが、仕事にすることは難しいところはありますよね。

<塩田科長>

理学療法士という仕事は大学受験までは知りませんでした。

当時は、機械が好きだったので工業大学を目指して受験勉強をしていました。その時に母方の祖母が入院をしてリハビリしていた様子を見てこういう職業もあるのだなと思ったくらいでしたが、母親から人のためになる仕事という勧めと、県外に出るよりも母親の近くで貢献できる職業として、本命の大学がありながらも受験して合格できたのでそのまま進学し現在に至っています。

入学時は不安もありましたが体の構造や動きなどの知識を深めていくなかで、機械においてもどういう仕組みで動いているのかという視点からみれば、共通する部分もあり違和感なく勉学に励めました。

インタビューの様子です。 色々伺っているうちに盛り上がってきました!

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◎管理者として活動するとき、軸としていること、大事にしていることがあればお教えください。

<前田科長>

患者ファーストでいます。悩む時には、必ず患者さんにとってどうあるべきかを優先し、進むようにしています。次に、病院やスタッフですね。つい、職員中心の思考に陥りやすいのですが、そうならないように注意しています。

管理職になり色々と思うところがありますが、それぞれスタッフの話を聞いて尊重しなくてはいけないですよね。どうしても注意が多くなるのでできるだけ褒める、プラスのストロークを入れるようにしたいと考えています。

また、忙しいと話しかけにくい雰囲気を醸し出してしまいますが、それはまずいと思って反省することも多いです。いつでも相談しやすい雰囲気になることが組織としての風土になるかと思いますし、「お疲れさま!」と声をかけるだけでも日々積み重ねていって、心を病むスタッフが少しでも減れば良いと思っています。

<高芝科長>

管理職として軸にしていることは、基本的に諦めないことです。大きいところでいうと、オールフォーワン、ワンフォアオール(all for one, one for all)ですね。

一人でできることには限界があるので、管理職が何でもこなせるようにするのではなく、んなで一緒に成長していかないと実際に人は動かないと思っています。一人で何かをやらないよう、みんなで一緒にやることを心がけています。命令ではなく、お願い、依頼ですね。

<塩田科長>

私自身ためらうことが多いため、行動力を大事にしています。成果を出すためには色々な方法があると思いますが、失敗を恐れるあまり計画や準備に時間をかけ、慎重になりすぎ行動を躊躇するような状況にならないように心掛けています。行動を起こさない事には成果には繋がらないと思いますので、まずは行動を起こしそこから見えてくる問題点や改善点を繰り返し精査し実行するようにしています。

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臨床家として、管理者として第一線でご活躍の前田科長、高芝科長、塩田科長にお話を伺いました。

【後編】は、近森会グループのリーダー育成の根幹についてお話いただいております。
乞うご期待です!

編集長 下田静香

 8月の猛暑から、9月に入りすっかり初秋になりました。
 今年の夏も新型コロナ感染対策で終わってしまいましたが、ワクチン接種が進み、少しずつ様々な活動が戻ることを願ってやみません。

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 さて、リーダーの役割を本コラムでお伝えしておりますが、今回は「リーダーの5つの役割」の4つ目の「模範となる」です。

 ✅ 方向性を示す
 ✅ 仕事の進捗状況を管理する
 ✅ 部下を把握する
 ✅ 模範となる
 ✅ 上司を補佐する

 方向性を示し、その後の仕事の進捗状況を管理しつつ、部下が元気で仕事ができているのかを見ながら、励ましたり、サポートしたりするとともに、リーダーとしての自覚から、部下に対して、模範となる行動がとれているのかは、大切なリーダーの要素だと思います。

 ただ、「模範」というと、何でもできるリーダー、100点満点リーダーのように完璧な姿を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。

 私の持論ではありますが、私はリーダーとは100点満点ではなくてもよいと思っています。要は何でもできる人でなくてもよいと思っています。
そもそも、周囲が「あのリーダーは○○点だね」なんてことをいうこともおかしな話ですし…。

 模範となるリーダーとは、次のことができる人、行動を起こしている人なのかなと思います。

 ✅ メンバーに“背中を見られている”ことを意識している(気にしている)

 「背中を見て育つ」という言葉があります。先輩のよいところを真似るという意味で使われていますが、最近は、リーダーの不得意なところを見つけて、それをメンバーが指摘したり、非難したりするようなことも耳にします。
よいところだけではなく、できていないことも見られていることを気にして、それを自覚することも大事だと思います。

 ✅ 自分のできていないこと、不得意なことを認めて、それを正す行動をおこしている

 できていないこと、不得意なことを自覚した上で、それをどう正せば、もしくはできるようになればよいか、具体的な行動をおこしているのかもメンバーは見ています。
 メンバーに対して、リーダーも不得意なことがあるものの、それをどう克服すればよいかを考えて自ら動く姿を見せるということで、「模範となる」につながるのではないでしょうか。

 ✅ 行動規範や人事評価表(一般職員用)に書かれていることを常に振り返っている

 上記2つのことを手っ取り早くできるとしたら、自院の人事評価表(一般職員用・・・メンバーレベル)を厳しめにチェックしてみるとよいでしょう。
 人事評価表(一般職員用)には、メンバーに求められる行動が書かれています。リーダー自身がメンバーに求めることをできているのかを厳しめに自己チェックし、できていないことを正すという行動を見せることです。

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 リーダーになったからといって、「何でもできなければいけない」、「失敗は許されない」など、気負いすぎるのではなく、「できなことがあってもいい、それをどうにかしようとし続ける」リーダーの方が親しみやすいリーダーと思いませんか。

■執筆:下田静香 
  (セラピストリーダーズアカデミー編集長、株式会社エイトドア代表取締役)
 法政大学大学院イノベーションマネジメント研究科修了(経営学修士MBA)。医療、介護、保育、障がい者施設の人事制度構築、人材育成・組織運営等研修等や講演、執筆等で活動。全国の病院、福祉施設で実績を積み、それに付随する評価者研修講師は延べ800件を超える。回復期リハビリテーション病棟協会、東京都社会福祉協議会、神奈川県社会福祉協議会、香川県看護協会、八戸市消防本部他団体他で研修講師を務める。著書に「介護施設のためのキャリアパスのつくり方、動かし方」(東京都社会福祉協議会)、「理学療法士育成OJTテキスト」(文光堂 共著)他。現在、「デーリー東北紙『私見創見』」にコラム執筆中。

『9割がバイトでも最高のスタッフに育つディズニーの教え方 』
福島文二郎 (著)

(株)中経出版

エンターテイメントの代名詞とも言えるディズニーは、その8割以上がアルバイトで成り立っていることはよく知られた事実です。

なぜ、アルバイトが大半を占めるディズニーにおいて、極上のおもてなしをすることができるのか、本書ではその秘訣について語られています。

その内容を少しご紹介すると・・・

ディズニー流の人の育て方やコミュニケーションの極意

☑︎「見て覚えろ」では後輩は育たない
☑︎後輩に「いつも見てくれている」と意識させる
☑︎指示するときは、必ず「理由」も伝える

医療や介護の現場で『人』に悩んでいる方にとって、きっと目から鱗の内容が満載の一冊。是非、「読書の秋」の夜長にいかがでしょうか。

本格的な夏が始まりましたが、体調など崩されていませんでしょうか。

私は現在、関西に住んでおりますが、30歳まで北海道で過ごしていたので「お盆を過ぎたらもう夏は終わり。そろそろ、長袖を着なくては。」という気持ちが未だに染み付いています。

また、北海道は今でこそ、5、6月頃に蝦夷梅雨と呼ばれる湿度が高い日々が続くことがあるようですが、かつては本当にカラッとした夏空が広がっていました。

所変われば・・・という言葉がありますが、これも様々な土地に住んだ経験があるからこそ感じられる事柄なのだと思っています。

さて、前置きがかなり長かったのですが、今回のテーマは「なぜ、あの人はいつも楽しそうに仕事をしているのか?」でした。

私には、小学校4年生の娘がいるのですが、なんと、この年にして彼女は最近「私は結婚しない!」宣言をしました。「なぜ?」と訊いてみると、「だって、結婚したら自分だけじゃなくて、みんなのご飯を作ったり、洗濯したりしなきゃいけないでしょ。」と。

苦笑しながら、私自身の普段の行動や口調に気をつけなくてはいけないと強く思った次第ですが、それは置いておくとして。

この、「してあげている」「何かを与えている」といった考え方は、仕事においてモチベーションの部分に大きく関わってくるのだと考えています。

例えば、同じ部署の課長が諸事情でお休みすることになったとします。そのため、今日行われる予定の重要な会議は、リーダーである自分が出なくてはならない状況となりました。

これを「代わりに会議で出てあげている」と思うか、それとも「課長職としての仕事を学べる良い機会だと捉えるのか」では、大きく仕事に対する姿勢が変わることは想像に難くありません。

つまり、日常の業務においても「誰かの代わりにやってあげた」と感じ、知らないうちに見返りを求めるのではなく、「自分の経験やキャリアのためにやろう」と思って取り組む方が、何倍も楽しく仕事の効率も上がるのです。

モチベーションを語る際に取り上げられる理論の一つに、ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学などで教鞭を執っていたダグラス・マグレガー(1906-1964)が主張したX理論・Y理論があります。私たちは基本的には怠けがちなので、強制や命令によって管理し、必要に応じて罰を与えなければならないとする考え方がX理論。いわゆる、アメトムチですね。

それに対して、Y理論というのは、魅力的な目標や責任を自ら設定し、その達成感によるやりがい、得られたものによって行動を起こす。つまり、社会的欲求や自己実現欲求によって動かされるという考え方です。

私たちは仕事に取り組むにあたって、目の前の労働条件やすぐに結果が出るものに目がいきがちですが、実は本当のやりがいというのは他人が提示したものではなく、自分の中にあるのかもしれません。

「自分自身に、どのような成長の機会を与えてあげることができるのか」
暑い夏の夜に、そんなことを考える機会を設けてみてはいかがでしょうか。

医療職ではない方との話からとっても面白い話ができたので紹介したい。

先日、知り合いの美容師さんとゆっくりお話しした。COVID-19でお客さんの通う間隔が長くなり、リピート頻度は低下しているということである。更には、おしゃれな街にある有名店が昨今の社会情勢から店舗賃料の問題で、下町に進出してきて、お客さんが取られているのではないかという脅威なんだそうだ。なるほどと思った。

その美容師さんのお店は2人の美容師さんで運営している。素朴なたたずまいで、その方もお話が上手で着飾っていない。子ども連れの方からご年配まで、若者となると男女を問わずお店にいらっしゃる。特に美容の用ではなくても、ちょっと顔を出してお話ししていく街の方々も多い。そうしたことを苦にせず対応している。待ち合わせ場所にもなっているようだ。

これって必要なんじゃないかと思う。有名店やおしゃれでないお店では対応できないであろう。そこで、そのお店の方に「ちょっそ疎遠になった方に電話とかするとよいかもですね」と思わず聞いてみた。「斉藤さん、実はしてるのよ。お節介にもしちゃうんです。どうしたかって、ご年配の方に」と即座に返答された。

この自然のコミュニティこそ、地域包括ケアで求められる自助互助であり、見守りだろうと。下町のとある美容室が通いの場になっていたり、閉じこもりの前触れをチェックしできたりする機能があるかもしれない。若者対象のおしゃれな美容室ではできない、もてない役割だと思う。

そういえば、幼いころの散髪屋さんはそうだった。ご近所付き合いの延長だ。デジタル化などは否定しないが、こうしたヒトとヒトの部分は残せるなら残すに越したことはない。歯科医は歯からその人の人生がわかるといわれるが、街の美容師さんや美容室はこれからの時代にはなくてはならない社会資源かもしれない。美容室に行けるようにセラピストは生活機能を回復、維持することは、デイサービスやデイケア、訪問リハにつなげるよりも大事かもしれない。

この美容師さんと管理について、次の話もした。

美容師さんのスキル指導は難しいようだ。その場でいうことはなかなか難しい。そうした意味では、我々も同様かもしれないが、我々の場合はある程度説明をすることで、患者の利益は高まるので納得されることが少なくない。しかしながら、お金だして身だしなみを整えるのに、その場でダメ出しというか、こうしたらというようなことは難しいようだ。特に、お客さんの希望を聞き出すことなどのヘアカットなどの技術もよりも、プロフェッショナルコミュニケーションの部分を伝えることが難しいとのこと。皆職人気質だから、あの時は言うこと聞かないとということになる。なるほどなと・・・。同じだ。

そこで提案してみた。ビデオで撮影しておいて、お客さんの同意を得て、別の時にそれを見ながら指導してはどうかと。何かつながったようで、早く聞きたかったと言っていた。聞いてみると、系列の1店舗があり、社長が指名して現場を任せた管理者が上手くなくてもうどうしようもなくなったとのことで、見てほしいとヘルプに行ったが、どうしようもなかった状態だったそうだ。

技術系の管理者になる人は技術だけでは難しい。でも技術がないとさらに難しい。そう考えると、技術系職種での管理って難しい。けど面白い、奥深い。

執筆: 
斉藤 秀之(さいとう ひでゆき)
(筑波大学グローバル教育院教授)

かつての”老人病院”が増加した時代に看護師になられ、そこからの疑問に訪問看護で在宅での「人の死のありかた」を考えることになられた「みきまさよ」(三木昌代)さん。
訪問看護でのご経験から、現在は介護施設での副施設長として、お看取りの考え方、あり方を職員の皆さんにお伝えしていらっしゃいます。

一方で、ご経験を通じて、介護を必要とされる方々に携わる皆さんにことばを届けたいということから絵本『ありがとう…わたしはあの世へ、光の国へ』(文芸社)をご出版されました。
絵本を通じて、誰に何をお伝えしたいのかなどを伺いました。

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◎「みきまさよ」(三木昌代)さんの所属の法人はこちら
社会福祉法人万亀会

◎「みきまさよ」(三木昌代)さんのプロフィール
<現職>
社会福祉法人万亀会 副施設長

<ご本人からの自己紹介>
現在、兵庫県加古川市にある社会福祉法人万亀会の副施設長をしております。

元々は訪問看護を長年しておりましたが、平成26年に社会福祉法人万亀会が運営する地域密着型特別養護老人ホーム 千鶴園の開設のために、責任者として声がかかり、高齢者を生活の場で自然な形でお看取りする、一人でも多くの高齢者が、幸せにこの世を卒業できるような施設を作るいう目標をご理解いただき、入職しました。

入職当時は、看護師として現場に入り、現在は管理職として、現場の応援をしております。

目指すは 「3方よし(ご入居者よし、ご家族よし、職員よし)」です。

◎所属の法人のご紹介(地域での役割、機能、特長など)をお願いします。

長い歴史のある法人です。離職率が低く、職員が働きやすい職場です。今は新型コロナ感染の影響で中断していますが、地域交流も盛んで、地域の方の集い場となっていました。幼稚園、小学校も近く、行事などの時は、お互いに行き来をしておりました。

<社会福祉法人万亀会の沿革>
昭和54年 社会福祉法人 万亀会 特別養護老人ホーム万亀園 開設
平成12年(2000年)居宅介護支援事業所、ホームヘルプ事業、デイサービスができ、
平成21年 従来型の特養から、ユニット型特養に変更 入居70床、ショート2床
地域包括支援事業所 のぐち 開設
平成26年 地域密着型特別養護老人ホーム 千鶴園 開設 入居29床、ショート10床
平成28年 リハビリデイサービスちづる 開設 (リハビリ特化型 デイサービス 半日コース)

◎この度、絵本『ありがとう・・・わたしはあの世へ、光の国へ』を出版されたと伺いました。
どのような絵本かお教えください。また、絵本を書かれた背景もお聞かせください。

この絵本の内容は、ある一人の女性が生まれてから亡くなるまでを一冊にしています。一番伝えたかったのは、この世に生まれて人の手と愛情をかけてもらって成長をする過程、その逆に、老化と死までの過程、下り坂の過程にも必ず手と愛が必要だということです。

人の手と愛情というのは、昔は家族でした。家庭の中で老い、死んでいきました。それが、昭和51年頃を境に、在宅死と病院死の数が逆転しました。昭和51年以降は、病院で亡くなる方が圧倒的に増えました。ピークは8割以上の方が病院で亡くなっていました。現在、国の政策である地域包括ケアシステムにより、病院完結型の人生から、地域完結型の人生を送れる人を増やそうとしているわけです。

しかし、実際に私は、訪問看護で在宅に携わっていた時に、自然な老衰の方が家で亡くなることがなかなか難しいという体験をしました。

そして、今の日本で老いと死を支えているのは介護の仕事です。介護職のみなさんがいるからこそ、老いて死んでいけるわけです。多くの人が何らかの介護を受けて亡くなっていっているのです。

話をする機会があるとき、ご参加の方々に聞くんです。

「あなたはどうやって亡くなりたいですか」と。

すると、会場のほとんどの人が「ぽっくり死にたい」と言われます。ところが、ぽっくり亡くなることができる人は1割に満たないんです。円満にぽっくり死ねるのは本当に少ないんです。

ということは、9割の人は老いて、そこには人の手があって、愛情があって、そうやって亡くなっていく。人が生まれてから成長していく過程の逆が必ずあるということを学んでいないんですね。そして、考えたくない。

だけど、これから老いていく人たちにとっては、そこを覚悟して受け入れて自分のこととして考えていかなくてはいけない時代なんです。

私はどうやって、どこで老いていきたいのか、どうやって死にたいのか、家族とよく話をして、自分の意思を残して欲しいと思っています。それが必要な時代になってきているわけです。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_02783.html(人生会議ACP:厚労省)
https://songenshi-kyokai.or.jp (公益社団法人 日本尊厳死協会)

私は、日本尊厳死協会に入って、いつ何があっても良いように、事前指示書(リビングウィル)を残しています。

◎ 昭和51年頃を境にというお話がありましたが、何か背景があるのでしょうか。

まず、昭和36年から国民皆保険が始まり、医療を受けやすくなりました。そして、老人保健法、老人福祉法が改正となり、お年寄りの窓口支払いがゼロという時代がありました。無料で医療が受けられるようになったのです。それに乗っかって、“老人病院”が山ほどできました。お年寄りが病院へ行くことに抵抗がなくなって、病院の外来がサロン化しました。

面白い話があるのですが、外来の待合で毎日会う人がいるんですね。「今日あの人来ていないみたいだけど、どっか悪いんじゃないの?」というふうにサロン化して、たくさんの人が病院に訪れるようになりました。ちょっと調子が悪い、熱が出たというと、入院して治療が受けられるようになりました。

たくさんの人が入院しました。お年寄りは病気になることが多くなります。しかし、病気がなかなか完全に治らない、入院が長引く、そのまま弱っていく・・・。そして亡くなっていく。病院で亡くなることも普通になってしまいました。

そのような中で、病院死が増えてきたわけです。老化による症状に病名をつけて、そして家に帰れないお年寄りが増えました。

私はちょうど、昭和58年から看護学生になって昭和61年に卒業しているのですが、病院で死んでいくことが当たり前だと思っていました。

病院で見ていた死も老いも、幸せでなかったんです。とても辛かったですし、怖かったです。私は、初めて人の死を見たのが学生の時の受け持ち患者さんだったので、怖くて辛くてしょうがなかったですね。その当時は、看護の仕事を続ける自信がありませんでした。

◎ この絵本を通じて、どんな方にどのようなことを知っていただきたいですか。

まずは、老いていくすべての人に知ってほしい。その覚悟と準備をしてほしいという思いから書きました。

そして、介護職員を中心に、医療従事者の方、セラピストの方には、みんながチームになって人生の下り坂を支えていく役割があるということ、その延長線上にお看取りがあるということを知って欲しいと思っています。

「看取りの現場は、愛と感謝にあふれて、幸せで尊い現場です」

三木昌代さんがアレンジしたお花(その1) 施設には、こうしたお花が毎日あふれています🎵

◎ 子どもたちにも知っていただきたいことが多いように思いますが、いかがでしょうか。

今の日本に圧倒的に足りないが、「老いと死の教育」なんです。

子ども達はどこから死を学ぶのかなと思って、孫が好きだという『鬼滅の刃』全23巻を読みました。とても感動したのですが、あの中で描かれている死は悲惨で悲しくて辛いんです。でも、そこで死を捉えてほしくないと思いました。一生懸命生き切ったらハッピーな死が待っているということを何かしらの形で伝えたいです。

子どもたちに向けて、違う形でできたらいいですね。どうしても、老いと死の教育がないので、いまだに「忌み嫌うもの」になっています。死は忌み嫌って遠ざけるものではなくて、身近なものであり、必ずいくところ、そこを見据えましょうという教育があってもよいと思います。

昔、何世代も同居していた時、自宅でお年寄りが、老い、亡くなる姿を、子、孫に見せるのが、お年寄りの最期の大きな仕事だったのだとも言われています。

◎絵本のご出版もお看取りから伝えたいことを綴ったとのことですが、三木副施設長にとってお看取りとはどのようなことなのでしょうか。

ごくごく自然なことなんです。そこに寄り添わせていただいた私たちは、感謝の気持ちと愛情をいただいて胸がいっぱいになるんですよ。そういった経験をたくさんさせていただきました。

私は学生の時に、死が怖くて仕方なかったのですが、経験の中で亡くなりゆく人から、自然なことだと学び、人が生まれるのと同じく、死ぬことも自然なことだと思えることができました。その自然な過程というのは、すごくやはり専門的な知識で支えていくことが大事だなと感じています。

うろたえない。そして、そこをしっかりみんなで受け止める。力、チームワークです。そこに、ご家族も加わっていただいて幸せなお看取りを作っていく、組み立てていく。

私たちの合言葉として、「今日1日を、はなまるに。」というものがあります。

利用者の方々は超高齢者です。今日亡くなってしまってもおかしくないんですね。だから、今日1日を毎日大切にしようねというのが合言葉なんです。

そんな中で、みんなで共有したいと思っているのが、死は、この世の卒業だということです。小学校を卒業するときも、中学校を卒業するときも、先生に言われた言葉はおめでとうですよね。でも、別れるからさみしいんです。卒業式はみんな泣きますが、次行くステージが明るいステージだと。高校、社会人になるときに、「かわいそうに。あんな社会人になるなんて。」とは言いませんよね。それと同じで、この世を生き切って次のステージに行くんだという明るい死生観を持ちましょうと伝えています。

「この世で90年、100年生きて、晩年は自分の体が思うように動かなくて大変だったでしょ。でも、一生懸命生きてくださって」と。

三木昌代さんがアレンジしたお花(その2)

◎多くのお看取りをご経験されて、三木福施設長を成長させてくれたことなどエピソードをお教えください。

あり過ぎて、一つを選ぶというのも難しいのですね。

信じがたい話かもしれませんが、自然な老衰の経過を過ごし、過剰な医療を受けなければ、自分の思うように、自分の好きなタイミングで亡くなっていくという経験をたくさんしています。

例えば、在宅での話ですが、脳梗塞で全く意識がない方、今では珍しい大家族で、家族みんなでお看取りをしましょうということになり、自宅へ戻られた方がいました。

8畳間を二つ繋げた部屋で、週末はおばあちゃんの横に布団をひいて、ひ孫たちのお泊まり会が行われるような暖かい家族だったんです。でも、本当にいつ亡くなってもおかしくない状態だったんです。

ただ、大家族となると、それぞれにイベントがたくさんあります。
そして、家族みんなが言うわけです。

「ばあちゃん、今日は死んだらあかんで。運動会があるから。」
「ばあちゃん、今日は死んだらあかんで。今週末は婦人会の旅行だ。」
「ばあちゃん、今週は稲刈りがあるんだ。」と。

いろんなイベントが次々とあり、そしてすべてのイベントがひと段落しました。

「ばあちゃん、ありがとな。今まで生きてくれて助かったわ。みんなの用事終わったから、いつ死んでも良いよ。」と家族が言ったのです。そしたら、次の日の朝にお亡くなりました。こんな不思議な経験だらけなんです。

そういうことがあると、暖かい気持ちになるんです。

旅立ったご本人にも心からありがとうと、今まで頑張ってくださったと、最高の最期をみんなで迎えられたと。そうすると、死は寂しくて忌み嫌うものではなく、あったかくて優しくて感謝で包まれるなんとも言えない空間になるんです。

また、こんなこともありました。

亡くなるときというのは、下顎呼吸になるんですね。下顎呼吸になって2、3回でお亡くなりになる方もいらっしゃいます。ただ、いつお亡くなるかはわかりません。かつて、お看取りの場を当施設でという方がいて、ある日、下顎呼吸が出て、「今日かもしれない」という状態になり、みんなで見守っていたんです。

ご入居のユニットだけではなく、他のユニットの職員も一緒に関わりました。でも、呼吸がずっと続いていて、今かもしれないという状態が続いていました。その瞬間を待っているわけではないのですが、「見守っているその時間はすごく大事」ということでで、仕事を終わったスタッフたちが見守っているご家族に「一緒にお茶会をしましょう」と持ちかけました。娘さんも他ご家族8人くらいで囲んでお茶会を始めました。

娘さんがお菓子を出してくれて、それを食べながらコーヒー飲みながら、その方の昔話を聞かせていただきました。その昔話に本当にみんなで大笑いしながら。その隣にいるのは、もうすぐ逝く方です。

そうして、20時半ぐらいになってもまだ呼吸が続いていたので、一度、解散することにし、娘さんも一度帰られました。その1時間後に呼吸が止まったんです。

その後、娘さんは最後のお茶会が忘れられないとお手紙をくださいました。私たちも心に残るお看取りだったなと。その方はきっと、楽しくて満足して、逝くときは一人で行くわ、という感じだったのだと思います。

三木昌代さんがアレンジしたお花(その3)
テーブルにさりげなく、かつ凜と咲いています🌸

◎介護施設でも機能訓練という役割で、セラピストの皆さんが活躍されています。
副施設長のお立場から、どのような役割を期待していますか。また、具体的な活躍場面をお教えください。

現場の「かゆいところに手が届く」という存在です。

レクレーションなどを積極的にして下さり、ご利用者を笑顔にして下さっています。ご利用者同士の繋がりが出来るようにとの配慮もあります。日常生活動作については、あらゆる介護現場に関わり、ご本人の力が十分発揮できるように、アドバイスしながら、現場の介護スタッフの身体の心配もしてくれます。

睡眠障害のある方は、紫外線にちょっとあたっていただきたいんですよね。ただ、現場の介護士さんが外に連れて行くのはやはり、人的に手が足りない。そういう時、積極的に紫外線にあたりに行きましょうなど、すっと動いてくださるのがセラピストの方です。

また、専門的なことでいえば、歩行器やその人にあった車椅子の調整に関するアドバイスをしてくれ、業者さんとのやりとりをしてくれます。「この方、こんな風に困っている」と現場から言われると、「こうしてみよう、ああしてみよう。」と、セラピストとしての引き出しからアイデアをくださいます。

そのほか、マッサージ的な関わりですね。

体を自分で自由に動かせない方というのは、筋膜の痛みなどもあったりして、ちょっと触れて触ってもらうことで癒されます。そこを専門的にやってくださいます。一生懸命、関節を触ってくれたり可動域の訓練をしてくれたり、マッサージをしてくれています。

きめ細やかな気づきと関わりを、今後も期待しています。

スタッフとの打合せの様子(右側が三木昌代さん)

◎ 今回、絵本をご出版されて、次にやりたいことは何ですか。

生活の場でお看取りされる人を増やしたいですね。そういう生活の場を増やしたい。昨年、年間138万人亡くなっています。一昨年より減りましたが、その中で、約100万人以上がまだ病院で亡くなっています。生活の場で亡くなる人が全体の2割くらいです。

今後、ピークで年間160~170万人まで死者が増えると言われていますが、在宅、特養、老健などいろんな生活の場で、自然な形で過剰な医療を受けずに亡くなる人をその半数、昭和51年以前に戻したいという思いです。生活の場でお見取りをする国になってほしいと思っています。

◎ 大変バイタリティーのある三木副施設長で、いつも何でも楽しまれているように見えます。ご自身を元気にしたいとき、どんなことをされていますか。

食べること、旅行することですね。花も好きですし、ヨガもしています。何をやっても楽しいですね。

37歳の時に主人が大病をして、死にかけました。今は生きていますが、心筋梗塞後、心室内に血栓ができてしまいました。開胸手術して血栓を取ったのですが、そのとき先生から、その日に生きられるか、亡くなるか半々だと言われましたし。血栓が見つかったときも、これが飛んだら即死だと言われた時に、本当に死を身近なものとして意識しました。そう考えると、今、生きているだけでオッケーですよね。

不思議なことに、あれだけいびきがうるさくて腹が立っていたのに、その後は、いびきが聞こえるのは子守唄です。生きていると思うからです。その経験も、すごく影響しているのかもしれないですね。何事も嬉しいし、楽しいし、感謝の気持ちがそうさせているのかもしれないと思っています。

これまで、病院での死、在宅での死、そして施設での死をたくさん経験させて頂いたので、これから関わるご利用者とご家族には、生活の場で最高の、理想の亡くなり方が出来るようにお手伝いしたいと思っています。

◎  最後に、全国の介護施設で働くセラピストの皆さんに応援メッセージを

生活の場では、セラピストの皆さんの専門的な知識を必要としています。
その専門的な知識で、ご利用者が楽しく生活できるように、アドバイスや介入をお願いしたいと思います。

職域の壁を越えて、高齢者の生活を支える仕事を一緒に楽しみましょう。

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【インタビュー後記】

ご入居さんやご家族にはもちろんのこと、所属されている施設のスタッフにも明るくお声おかけして、周りの方たちを元気にさせてくださる「みきまさよ」(三木昌代)さん。
インタビューでお話を伺っているうちに「老いる」や「死」が人生の一部であることを私自身も深く考える機会となりました。
「生きる」「行き切る」は自分で考えておくことが「人生のしまい方」なのですね。
また、お看とりを通じて、スタッフへの「死」の捉え方を伝え、介護施設のスタッフとしての誇りも伝えていらっしゃると思いました。
絵本を通じて、お看取りを学ぶこともできると思いました。
是非、一度、絵本をお手に取ってみてください!

みきまさよ(三木昌代)さんの施設では、お花がたくさん飾られています。ご入居者さんに見ていただきたいという思いが伝わってきます。素敵ですね💐

みきまさよ(三木昌代)さん、お忙しいところインタビューをお受けいただきありがとうございました!

編集長 下田静香

編集長の下田です。
毎日暑い日が続きますね。
今年は北海道でも観測史上初めての猛暑続きとのこと。すっかり日本の四季は変化してしまいました。
以前あるテレビ番組で観たのですが、日本各地の果物は、産地が北に変わってくるとのことでした。また、南の地方には南国の果物が栽培できるようになると。
私たちの身体も暑さに慣れるよう変化するのでしょうか。

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さて、前回は「リーダーの5つの役割」の2つ目「仕事の進捗状況を管理する」について詳細をお伝えしました。

 ✅ 方向性を示す
 ✅ 仕事の進捗状況を管理する
 ✅ 部下を把握する
 ✅ 模範となる
 ✅ 上司を補佐する

今回は、3つ目の「部下を把握する」です。
 

2つ目の「仕事の進捗状況を管理して」、順調にチームの仕事が進んでいたとしても、その仕事をしてくれているスタッフが疲弊していたり、しんどい思いをしているのであれば、順調に進んでいることも長続きしません。

また、順調に進んでいて特に問題ないと思っていても、実はスタッフは不満を抱えながら仕事をしていることもあります。

リーダーは、仕事の管理とスタッフの管理を並行して観ることが求められます。それが、「スタッフを把握する」ということです。

そこで、「把握する」という言葉を具体的な「行動」で解釈しておく必要があります。
「把握する」とは、

  ◎スタッフがどんな状況で仕事をしているのかを見に行く  
  ◎スタッフの表情を見る
  ◎スタッフの声のトーンから様子を伺う
  ◎スタッフに声をかけて反応を見てみる

などが挙げられます。

上記の行動をとることによって、 

 ✅ メンバーの体調管理ができている。

 ✅ メンバーの毎日の表情、声のトーンなど定点観察できている。

 ✅ メンバーの得意なこと、不得意なこと、好きな仕事と嫌いな仕事を知っている。

ことができ、スタッフが心身ともに健康で、楽しく仕事ができているのかを確認することができると思います。

スタッフのモチベーションがどんな状態かを知るには、声をかけたり様子を見たりすることから始めましょう☆彡


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特に、仕事を頼むと快よく引き受けてくれるのですが、実はその仕事はあまり好きではない仕事だったりすることもあります。話す機会がある時に「いつもお願いしていて申し訳ないですね」、「得意と思ってお願いしている仕事ですが、もしかしてあまり好きではない仕事だったら教えてくださいね」など気持ちを聞いておくことも大切だと思います。

そして、「いつもありがとうございます」「いつも助かっています」という感謝のことばも添えておきたいものです。

「スタッフを把握する」は、スタッフがより前向きに仕事に向き合ってもらうようなリーダーの具体的な行動をとることです。

まずは、把握する行動がとれているのか、それに対して具体的なことばかけができているのか、振り返ってみてください。

次回は、4つ目の✅「模範となる」です。

『薄っぺらいのに自信満々な人』
榎本 博明(著)
日経プレミアシリーズ

心理学博士である著者が、人の気持ちの本音をわかりやすく、面白く書いてくれている一冊です。
単刀直入なこのタイトル! 人前では言えない言葉ですが、そう思ってしまうことって実は誰もが経験したことがあると思います。どんな内容が書かれているのか、ついついめくってしまいます。

各章のタイトルもまた興味がそそられます。
■ 「意識高い系」はなぜ仕事が今ひとつなのか
■ コミュ力信仰に翻弄される若者たち
■ 本物は一人でいることを怖れない
などなど・・・

また、本文でも「それそれ!」と思えるキーワードが満載です。

他者分析にだけではなく、自己分析として、自分の言動を振り返る機会にもなりそうな一冊です。

上場企業の執行体制に関するニュースを見る。コーポレート・ガバナンスコード、外部取締役、監査委員会等設置会社などキーワードから社会状況を鑑みている。共通して感じることは、代表取締役や執行を監視する体制をいかに重厚にするか、監視に限らず、役員指名や報酬決定においても内部のみで決めているわけではなく、外部の意見が反映された意思決定であると考察した。

なぜこうなるのか。役職が上がるにつれ、権限が強くなる。スピード感をもって事業執行する上では、役職者に権限を与え、自己の裁量権の範疇で的確に事業執行することは全く適正である。しかしながら、言葉は適切ではないが、ワンマン、暴君とか横暴と紙一重かもしれない。そうした意味では、事業執行を監視する内部、外部を重厚にすることで、そうした見方は否定され、組織の安定運営につながるのだろう。特に、大きな組織ほどそうした組織づくり重要となると考える。

我々、リハビリテーション部門、セラピスト部門の組織ではどうか。組織デザインとして、外部取締役、つまり外部の相談役や顧問、あるいはコンサルタントを置けるほど体力のあるセラピスト部門は多くないであろう。そうなると、官僚型組織に準じた組織づくりを目指すことになる。課長は現場指揮官、部長はデスクワーク中心に指示を出す、取締役は会社全体経営を考え、常務は会社とともに経済界全体を見る、という整理されたものを見たことがある。また、ワクチンをめぐる政策決定で、菅内閣総理大臣は、目標設定、進捗状況の確認、意思決定、が役割で5-6人の国務大臣に役割を分担している。

私は、セラピスト部門のトップが部長として位置されることが重要であると考える。その人の重要な役割は、目標設定、進捗状況の確認、意思決定である。部長は、経営者に一番近い存在であり、経営と紐付ける、経営方針が決まる前に意見交換できる、あるいは影響を及ぼす権利を有している可能性がある。だからこそ、患者だけを診ていることで部長は務まらないのである。これをフォロワーに委ねているようでは務まらない。いわんや、部下の足を引っ張るような指示を出す部長は論外である。

部長、あるいは管理者は、自己の意思決定をするための助言者やフォロワーをいかに位置づけるか、どの助言を重視するかが肝になろう。その助言者に、監視役的な助言者を位置付けることができるトップは、きっと任された船のかじ取りを正しい進路に進める可能性が高いはずである。

この進路をさらに間違いないものにするためには、自分磨きをすることが、まずは大事である。そのためには失敗してもよいので未知の経験をたくさんしておくこと、その経験を自分の血肉にしておくこと、その経験を次の未知に活かす癖をつけることなど、自分自身が努力すればできることはたくさんある。たくさんの読書をすることも大事であり、諸先輩との語らいも重要であろう。そうした意味では、やはり外部の助言者を持つことは有益だろうとなる。

執筆: 
斉藤 秀之(さいとう ひでゆき)
(筑波大学グローバル教育院教授)

なかなか落ち着かない日々が続きますが、皆さんどのようにお過ごしでしょうか。
私はというと、単科生ではありますが、受講している大学院の科目がいくつか修了、ほっと一息ついている次第です。
本来であれば、リアルで受講する予定だった大学院の講義は、このコロナ禍でオンライン化が進み、全てzoomによる受講となりました。

当初は、一度も顔を合わせないで学びが深まるだろうか・・と不安に思っていたものの、始まってみるとそれはただの思い過ごしであり、むしろ地域を超えたつながりを生んでくれました。
北は北海道から南は沖縄まで。そして、海外組も参加した講義はバラエティに富んだものであり、業種をまたいだ受講者の本音やエピソードに毎回、新たな気づきを得ていました。

と、ここまでお話ししましたが、今回皆さんに伝えたいことの一つが「人生は、予想しない偶発的なことによって決定される」ということです。
私の場合、この大学院はリアルで受講しようと思っていたわけですが、状況がオンライン受講を促したということになります。つまり、当初は予想していなかった出来事になりますね。

米国スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授(1928-2019)が提唱したハップンスタンスラーニングセオリー(Planned Happenstance Theory)理論では「予期していない8割を占める偶然の出来事に対して、ベストを尽くした経験の積み重ねによって人生(キャリア)が形成される」と言及されています。

皆さんも、ご自身の人生を少し振り返ってみてください。

親の転勤、恋人との別れ、大学受験の失敗など・・自分にとって好ましくないと感じる経験は少なからずあったはずです。しかし、それを乗り越える度に新しい何かが得られていると考えれば、きっと無駄な経験なんて一つもないのだろうと私は思っています。

例えば、私の場合で言うと、最も大きな挫折のうちの一つが「大学受験の失敗」です。
それ自体は単なる勉強不足がもたらした結果に過ぎないのですが、何せ10代から20代への過渡期に失敗をする経験は、かなりこたえました。しかし、せっかく一年間、浪人をするのであればこれまで避けていたことにチャレンジしてみよう!と、これを機に大きく方向転換することにしました。

具体的には、文系から理系へと舵を切ったのです。
ちょうど先日まで、テレビでは東大受験をテーマにしたドラマ、「ドラゴン桜」が放送されていましたが、私の場合は「受かるため」と言うよりも「苦手を克服するため」に理系を選ぶことにしました。

そもそも、なぜ文系科目を勉強していたのかと言うと、単純に数学が苦手だったからです。いえ、苦手というよりも「何だかよく分からない」「難しそうだから手をつけにくい」と思った結果、後回しになり時すでに遅し・・の状態になってしまっていたというところでしょうか。

そのような経緯もあり、「せっかく一年間は勉強に専念する機会を得ることができたのだから、苦手分野にも思いっきり突っ込んでみよう!」と発想を切り替えることができたのは、紛れもなく大学受験という失敗があったからです。

このように、どのような出来事であっても気持ちの切り替え一つで描く未来は変わってくる、という経験は誰しも記憶にあることと思います。今回のタイトルに「○○転じて福となす」と敢えてつけましたが、災いも含めて全ての経験がきっと、自分にとって良い結果を生み出してくれるはず!そう発想の転換をすることが大切なのだと思う今日この頃です。

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執筆:原 麻衣子(はら まいこ)

株式会社エイトドア 人事アドバイザー
国家資格キャリアコンサルタント
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会アンガーマネジメントファシリテーター(TM)
2級ファイナンシャルプランナー技能士

北海道札幌市出身。北海道大学工学部卒。大学卒業後、外資系製薬会社でMRとして札幌市内の開業医を担当。その後、札幌市役所に入庁し、市立札幌病院の総務課職員係として院内の採用や労務手続き、臨床研修医プログラムの構築等に携わる。退職後は、子育て支援を軸とする株式会社AsMamaにて人事を担当し、現在は株式会社エイトドアで人事アドバイザーとして医療機関や社会福祉法人における人事制度構築等の活動をする傍、白石社労士事務所に所属し、広い業種での人材に関わるコンサルティングも行っている。

まさに、「リレー」の実現です。
リレーインタビューをさせていただいた徳山リハビリテーション病院リハ部副部長・広島中央リハビリテーション病院リハ部長の神田勝彦さんよりバトンが渡りました。

 神田さんのインタビューはこちら

バトンを受け取ったのは、宝塚リハビリテーション病院の中谷知生さん。
神田さんと中谷さんは大学の同期とのこと。

神田さんからバトンメッセージがこちら☆

「点を創り、結び、面を織りなすことができる人です。」 無いものをクリエイトする創造力、それを現場に適用させる臨床力、たくさんの人を惹きつける影響力があります。 出会った人の頭にキズ(記憶)をつけ、その心にキズナ(信頼)を生むことができるリーダーのため、中谷氏を推薦させていただきます。

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◎中谷さんの所属の病院はこちら
医療法人尚和会 宝塚リハビリテーション病院

◎中谷さんのプロフィール

<現職>
医療法人尚和会 宝塚リハビリテーション病院 療法部 リハビリテーション研究開発部門長

<ご経歴>
2003年 吉備国際大学 理学療法学会卒業
2003~2008年 医療法人近森会 近森病院・近森リハビリテーション病院
2008年~ 宝塚リハビリテーション病院
2017年~ 同リハビリテーション研究開発部門長

<資格他ご活動内容>
認定理学療法士(脳卒中/補装具/管理・運営/臨床教育)
一般社団法人 日本神経理学療法学会運営幹事
脳卒中理学療法診療ガイドライン第2版 作成班員
第20回日本神経理学療法学会学術大会 準備委員
臨床歩行分析研究会 評議委員

<開発、ご執筆等>
歩行補助具T-Support開発(2016年川村義肢株式会社より発売)
臨床にいかす表面筋電図 セラピストのための動作分析手法(2020年医学書院 共著)
盲点チェック!脳卒中リハ 装具活用実践レクチャー(2018年メジカルビュー社 分担執筆)

学会で発表される中谷さん

◎中谷さんの所属されている病院のご紹介をお願いします。

私の所属する宝塚リハビリテーション病院は162床の回復期リハビリテーション病床に加え、訪問リハビリテーションおよび通所リハを提供しています。セラピストは希望に応じ急性期・回復期・生活期の各ステージを経験することが可能です。また宝塚リハビリテーション病院を中心に学術活動のサポート体制を整えており,多くの論文執筆、学会発表、セミナー開催などの支援を積極的に行っています。

また、所属の法人医療法人尚和会は宝塚第一病院、宝塚リハビリテーション病院、介護老人保健施設のケアヴィラ宝塚、ケアヴィラ伊丹の4つの事業所を中心に,急性期から生活期までの切れ目のない医療介護サービスを提供している法人です。

◎理学療法士になられた動機、きっかけを教えてください。

PTになったのは28歳で、結構遅かったですね。元々、文系の大学を出たのですが、当時は就職氷河期のど真ん中でした。しかし、折角就職した会社も1年で辞めてしまいました。親にも迷惑をかけましたね。

その会社は宝飾品を売っていたのですが、とにかくその時は何とかたどり着いた就職先だったこともあり、必死でしたし、仕事自体は嫌いではありませんでした。しかし、宝石は贅沢品であり、それ自体なくても生きていけます。営業の仕事をしていく中で、虚しさを感じる瞬間もありました。1年も働いていないので偉そうには言えないのですが、色々と感じることがありましたね。

そこから1年間、浪人して吉備国際大学に入学しました。

その頃、祖母が入院して何回かお見舞いにいく中で、宝飾品を売ることの反対側の仕事があるのだと知りました。これほど人が生きていく上で必要な仕事があるのだと驚きました。

ちょうど、タイミング的にも改めて自分が一生やっていける仕事について考えていた時期でもあったので、今ならやり直せると思い、理学療法士を目指しました。

◎改めて大学に入られた時の気持ちを教えてください。

大学に入り直したのが24歳の時でしたが、同級生の中には似たような年代の学友がいました。そのような中で私は2回目の大学生活を思いっきり楽しみましたね。

実家が兵庫県、そして、大学は岡山だったので一人暮らしをしたことも影響していると思います。よく遊んだのですが、今となっては当時の友人が理学療法士としてあちこちにいるので、キャリアを積むほど彼らとともに新しい研究や講習会の企画で繋がる機会があり、仕事の幅の広がりを感じています。

◎宝塚リハビリテーション病院療法部では、教育面が充実していると伺いました。どのような人材育成の取り組みをされているのでしょうか。

一番力入れているのはキャリアラダーです。

数年前まではなかったのですが、ここ何年かでその必要性が高まってきたので、看護師のラダー作成研修のようなところへ参加して、自分たちで手作りしようということで取り組み始めました。

今後は次のステップとして管理職のラダーを作りたいと思っているところです。

◎ラダーの作成について、その必要性を決める一番のきっかけは何でしたか。

当法人は病院2つと老健2つ、計4つの事業所があります。

新卒で採用したセラピストはまず急性期あるいは回復期病棟でキャリアを始め、そこから希望に応じて異動していくのですが、異動によってキャリアの連続性がリセットされてしまうように感じるスタッフが多いことが悩みでした。受け入れる側も、これまでどのような評価を受けて、どこまでできているのかわからないというジレンマがありまして。

評価する側もされる側もどのように連続性を保てばよいか悩むことが多かったように思います。

しかし、セラピストとしてどのステージで働く際にも共通するものはあるはずという観点から、能力の評価あるいは到達点を確認するうえで何かしらの基準のようなものがあったほうが良いのではないか、そのことでより前向きに異動を捉えることができるのではないかと思ったことが一番のきっかけです。

◎これからラダーを作られる方に対して、アドバイスをお願いします。

私たちが参加したラダーの作成研修は、例えば、新人のラダーであればより新人に近いポジションのスタッフのアイデアを中心に作った方がよいという内容の研修でした。経験年数があるスタッフが作ると、高めの目標設定となりやすくズレが出てきやすいので、新人ラダーは2年目のセラピストに集まってもらって時間をかけて作りました。最終的に管理職も加わって完成させたのですが、あまり押し付けにならず、現場に近いものが作れたのではないかと思っています。

ラダー作成作業に関わってもらったスタッフからも、とても達成感がある作業だったとの感想をもらいました。また、一番反響が大きかったのは指導する側からの感想です。今まで評価をする側だった自分の視点が、いかに狭かったのかに気づくことができたという声がとても多かったです。

ただ、現場をわかっているスタッフが作成したこともあり、結構細かくなっているため、より使いやすい形となるよう今後も見直しが必要だと考えています。

◎商品開発も手掛けていらっしゃいますが、研究分野に進まれたきっかけについて教えてください。

私は、近森病院で急性期および回復期病棟に5年間勤務し、6年目で今の職場に移ってきました。実は近森会に勤務していた頃は、それほど勉強は熱心ではなかったですね。組織的な教育体制が比較的しっかりなされていた法人でしたので、困っても先輩に相談すればなんとかなる雰囲気だったこともあるかもしれません。

しかし、現在の職場は、ちょうどリハビリテーション病院の新規立ち上げのタイミングで入職したため、それまでの教えてもらう立場から逆にこちらが教えていかないといけない立場となりました。当時私は既に年齢で言うと32歳、臨床経験は6年目に入ったところでしたが、その時初めて自分がセラピストとして若手スタッフに何も提示してあげられないということを痛感しました。恥ずかしながらその時初めて、自分で必死に勉強しないと後輩にも、患者さんにも良いサービスを提供できないのだと気づきました。

そんなとき、外部に目を向けてみると、世の中には自分がわからないことに対して疑問に思い、学術活動を通して解決しようとしている人たちがたくさんいることに改めて気づきました。

私が学術や研究に対して真剣に取り組み始めたのはそこからなので、ここ10年ちょっとのものです。逆にいうと、開設当初の環境を何とかするために外からの情報を得なくてはならなかったということが、自分を変えてくれた要因となったのだと思います。

企業と共同開発された商品を身に着けている中谷さんです

◎研究開発部門長というお役職ですが、マネジメントという側面もあるのでしょうか。病院で「研究開発部門」を設置しているのは珍しいですね。

私は現在の職場に移ってきてからは、回復期病棟でスタッフとして、そして病棟の管理業務を中心とした立場で勤務しながら学術活動を行ってきました。そのためどうしても急性期や生活期を担当しているスタッフの臨床場面の疑問を共有したり、解決方法を考えたりという機会が少なくなりがちです。

そこで、ある程度の自由度を持って法人全体の学術や研究活動をサポートできるポジションで業務にあたる必要があると思い、現在の職務に就きました。まだまだ当初の目的である全体のサポートを実施するには乗り越えるべき壁がたくさんあります。学術活動や研究活動に組織的に取り組んでおられる他の病院のお話などを伺うと、当法人はまだまだ発展途上だなと感じています。

一方でリハビリテーション研究開発部門を置いてからは就職を希望してくれる学生さんのなかに、このようなサポート体制に魅力を感じたと言ってくれる人がちらほらと増えてきました。学びたいと思ったときにしっかりとサポートできるようにこれからも部門を発展させたいと思っています。

◎マネジメントの視点でお伺いします。マネジメント力を身につけるための具体的な教育はどのようなものがありますか。

セラピストのマネジメントを難しくしているのは、3つの職種が混じっていることが影響しているのではないかと感じています。例えば私は理学療法士なので、日本理学療法士協会あるいは都道府県理学療法士会の提供する研修等を通じてマネジメントを学んだり、施設間の理学療法士同士の交流があります。でも、そうした研修会は理学療法士という資格を通して提供されるものが多いので、そこにOTさんやSTさんも一緒に、となる機会は少ないように感じています。セラピストの管理職研修についても、ここ数年は理学療法士協会あるいは理学療法士学会が用意しているフォーマットが充実してきているのでそこを大事にしたいと思っているのですが、それが職種をまたいで利用することが難しいという部分が悩んでいるところですね。

また当院の回復期病棟にご入院されるのは中枢神経疾患と整形外科疾患の患者さんが中心となっていますが、STさんは基本的に整形外科疾患の患者さんを担当することがないため、セラピストの職種ごとに病棟全体との関わりの度合いにばらつきがあります。このあたりも看護師・ケアスタッフとの連携を含めた病棟のマネジメントを考えるうえで難しい部分なのかもしれないですね。

◎中谷様がリーダー(お役職)に初めて着任されたころ、マネジメントにおいて、壁にぶつかったこと、それをどのように克服したのかをお教えください。

最初は、病棟のリーダー的なポジションであり、それから副主任や主任を経験しました。病棟ごとの“色”が分かれていたのが、非常に苦労した部分ですね。

当院は病棟の構造が特徴的で、各フロアにリハ室があり、患者さんの入院生活はトレーニングも含めてフロアで完結しています。そのため、各階に配置されたセラピストは他階とは独立しつつ一日の業務を進めるので、病棟ごとの特徴が出やすい傾向にあると思います。最初はちょっとした違いだったことが、気がつけば色の違いが濃く出てしまうこともありました。

そうした中で、私は常に、学術の場に参加して外を見よう、と声をかけてきたつもりです。一つの病棟・一つの職場内だけで悩んでいると煮詰まってしまうことがあります。外部には、自分と同じような悩みを全く違う角度から研究している人がいます。私が学術を大事にしたいと思っているのはそこです。自分やあるいは自分の所属する組織が抱えている悩みは、他の病院、あるいはよその誰かも同じように抱えています。そして、それを解決するために行なった取り組みに関しての情報は学術の場に提供されています。

自分たちでなんとかしようとすることも大事ですが、実際にその人に連絡を取って話を聞いてみるなど、外に目を向けて進んでいくエネルギーの流れを作ることが、学術活動を通したマネジメントのとても大切な部分ではないかと感じています。

◎中谷様がリーダーとして、軸にしていること、大事にしていることがあればお教えください。また、その背景(理由)もお聞かせください。

セラピストはどこまでいっても技術職というか、技が好きですよね。若手に対して、ポジション(職位)で接すると同時に、あの人の技術はすごいと思わせることはやはり同じくらいすごく大事なのだといつも感じています。実際病棟で若手スタッフとともに患者さんを診る際に、一治療者としてそう思ってもらえると、マネジメントもよりしやすくなりますね

自分が若手の時もそうでした。1人の専門職としてできることを要所要所で見せてあげることが大事かなと思います。

年齢を重ねてくるとそれが通用しなくなるかもしれませんが、まだ40代半ばなので、まだ負けないという気持ちで頑張っています。

まだ、現場にはしがみついていたいですね!

◎リーダーとして、これだけは身につけておいたほうがよい、経験しておいた方がよいと思うことをお教えください。そう思われたご経験もお教えください。

意識が高く、モチベーションの高い新卒が、「研究開発部門に興味があり、応募しました」と言っててくれることは嬉しいのですが、高い意欲を持って入職した新卒のスタッフほど、より早く自らの専門分野を決めてキャリアアップを図りたいという意欲が強いように感じます。

こちらとしては、せっかく急性期から生活期まで経験できる法人なので、まずはいろんなステージを経験して欲しいと思っているのですが、モチベーションの高いスタッフほど少々焦りがあるように感じることもあります。

私自身は、なんだかんだと回り道をしてきて、そのすべての経験が巡り巡って今の自分を支える土台になっていると思っています。途中で今やっていることにどんな意味があるんだろうと思っていたとしても、すべての経験は最終的に今に繋がってくるんだと、いつも伝えるようにはしています。現在目の前の興味あることについてより知識を深め、外部のネットワークを広げていくことは当然素晴らしいことですが、それと同時に視野を広げていろんな体験をすることで、同じセラピストとしてより深みのある研究もできるのではないかと思いますので、あまり焦らずに色々経験して欲しいとは思っています。

そして、当院はそうした様々な経験をできる場所があると思うので、積極的に別のステージを体験したいと思ってもらえるような体制あるいは組織風土も培っていきたいと思っています。

◎最後に、全国の若手リーダーをめざすセラピストに期待することをお教えください。

40代というのは仕事がすごく面白く、今までやってきたことが全て繋がってくる時期だなと実感しています。20、30代前半の頃は、すごく苦しくて自分が何者なのか、どこに到達するのかがむしゃらに頑張っても見えてこなくてしんどかったのですが、40代になって、あの時無駄だと思っていたことが思わぬところで繋がることがあります。人間関係もそうですし、純粋に勉強してきたこと、点と点が繋がることが面白いと感じています。

だから、今やっていることが無駄だと思っても、目の前にある仕事を一生懸命取り組んでもらったら、必ず身になるのではないかと思います。

なんと、中谷さんは落語家さんでもあります!

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【インタビュー後記】

中谷さん、お忙しいところインタビューに快くお引き受けくださいましてありがとうございました。
実は編集長は面識がなく、初めてリモートにてインタビューでした。しかしながら、全くそのような感じを受けず、インタビューを進めていくうちに当初質問する予定のないことまで伺い、それでも真摯にお応えくださいました。
研究にいそしんでいらっしゃるところから、「これも訊きたい」「あれも訊きたい」ということが募ってくるのですね。それだけ魅力あるご経験をされていると共に、それだけのご苦労もあったのかと思いました。

また、落語家でもあることも興味深く、なんと、桂文枝さんにお名前をつけていただいたとのこと。ご趣味の落語だけではなく、リハビリテーションネタの落語を取り入れているそうで、聴いてみたくなりますね。

中谷さん、ありがとうございました!

編集長 下田静香

「COVID-19」をめぐるこれまでの社会情勢の流れを大きく変える可能性のある「ワクチン接種」が世界中で広まってきている。WHOも「ゲームチェンジャー」になる可能性があると見通しをも示している。筆者もどんどん広まればよいと思っている一人である。

少し前までは、優先順位の問題、副作用のリスク、供給量の確保ができていない、打ち手がいない、などなど盛んな議論がされていた。その当時ひそかに感じていたことは「打ち手問題」である。今回はその件についてお伝えしたい。

かの山中教授は当時より、希望する国民全員に冬まで2回接種を完了するためには1日当たり100万回規模の接種の機会が必要であると発信されていました。それを受けてかどうかは計り知れませんが、菅総理が1日100万回を打ち出し、わが国でも大きくその流れができつつあるように思います。1日100万回と聞いたとき、すごい数字だなと感じました。

現在の自衛隊組織が担っている大規模接種会場の状況を想像していなかった筆者は、1日100万回接種できたら冬にはゲームチェンジできるという雰囲気はとてもよいことだと思い、どうすればできるのだろうと愚策を講じていました。医師、看護師に加え、歯科医師、薬剤師、臨床検査技師、救急救命士などが現下における違法性阻却を根拠に打ち手とする議論も1つの案であります。漏れ聞いた話では、「三角筋」「筋肉注射」ということで理学療法士にもという議論も出ていたという話もまことしやかに流れていました。

実際、しかるべき筋には打診があったという話も耳に入ったほどです。この違法性阻却による打ち手よりも、私は往診医師、訪問看護師による在宅での接種、場合によっては看護師資格を有するケアマネジャーにも在宅モニタリングのなかで接種してはどうかと考えました。自らの力で接種会場に移動できる国民の議論が優先されます。同時に、こうしたマス(集団)に該当しえない国民への議論も同時にする視点が欠けているのではと思いました。

そしてもう1つ。日赤が運営している全国の献血センターと献血バスの活用はできないのだろうかということです。令和2年度実績によると全国総数で560万人超えの献血申し込み者を吸収できる能力を持つ広域事業です。ここには医師の問診機能、打ち手となる看護師、ロジを行える事務員がそろっており、場所もあります。現存している資源としてどうなだろうかと。

一方で、輸血用血液不足の問題も承知しています。年々減少しており、2027年には不足するという予測もあります。ところが、現下において医療機関で輸血の必要な医療はどうだろうか。健康リテラシーも高まり、受診控えなどを考えると、輸血用血液事業を期限付き、あるいは、地域限定でいったん中止し、ワクチン接種に専念するという考え方で、少しでも地域に在住する国民にワクチン接種を届けることができるならば、一考に値すると常々思っていました。もちろん、事業主体である日赤への評価もマストです。それほど筆者が思いつくくらいですから、きっと国の指揮者の皆さんも議論されたとは思います。その結果、現状ですので、浅学な知恵だと諦めましたが…。

おそらく、このままワクチン接種は広がっていくと想像されますが、今後さらに打ち手問題を検討することがあった際には、これをお読みなった担当者の方には一考してほしいと思っています。

このように、新たな課題に対して新たな対策を作り出すことが優先されるような印象があるのですが、本当に現状のヒト・モノ・システムなどの予備力や潜在能力で解決できないのかを立ち止まって考えなければいけないと思います。考えた結果、現行ではバリアがあってこそ、新たな創造を起案する。こうしたことは、日常茶飯事でしょう。落ち着いて、日々の課題を考え、実践し、いざという時に大きく展開できる備えをしていきたいと常々考えます。

執筆: 
斉藤 秀之(さいとう ひでゆき)
(筑波大学グローバル教育院教授)

『藁を手に旅に出よう“伝説の人事部長”による「働き方」の教室 』
荒木博行 (著)

文藝春秋

 とある会社に入社した新入社員たち。彼らの1か月半に渡る新人研修の様子を通して「働く意味」や「未来の描き方」まで学ぶことができる一冊です。

 主人公として登場するサカモトくんは、いつも誰かと自分を比較して、日々焦りを感じていました。しかし、研修で題材として扱った「浦島太郎」や「アリとキリギリス」といった寓話を通して段々と自分らしさに気づいていきます。

 新しくリーダーになられた方や新入社員に接する機会の多い方には、学びの多い一冊となることと思います。

編集長です!

あっという間に2021年度も2ヶ月が過ぎました。
新入職員の皆さんも少しずつ、職場に慣れてきたころでしょうか。
覚えることが多くて自信をなくしている方もいるかもしれませんが、まだ2ヶ月しか経っていないのですから、できないのも当たり前!と思って前を向いていただきたいですね。

先輩リーダーの皆さんも是非、そう声をかけてあげるとよいと思います。

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さて、前回は「リーダーの5つの役割」をお伝えし、1つ目の「方向性を示す」ことについて詳細をお伝えしました。

 ✅ 方向性を示す
 ✅ 仕事の進捗状況を管理する
 ✅ 部下を把握する、励ます
 ✅ 模範となる
 ✅ 上司を補佐する

今回は、2つ目の「仕事の進捗状況を管理する」です。

方向性を示して(話して)、やるべきことをメンバーに伝えたら、それがちゃんと進んでいるのかを点検するのが役割です。
「管理」ということばは、幅広すぎて具体性がありません。「管理」とは、複数の作業の寄せ集めであり、その一つ一つの作業がすべてタイミングよく進んでいるのかを点検することにあります。

そうなると、具体的に何を点検するのかを自分なりに決めておくことが大切です。
例えば・・・

 ✅ 誰が何を担当しているのか、自分(リーダー)も知っているし、メンバー同士も知っている。

 ✅ メンバーが一日の計画、一週間の計画、一か月の計画、一年の計画を立てられるようアドバイス、サポートする。

 ✅ 滞っている仕事があれば、自らが手伝うのか、見守って待つのか、何らかをサポートする。

というようにです。

多角的側面での点検が大切ですね。いろんなことが見られる「眼」を持とう!

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リーダーとしての役割で最も作業量として多いのが「仕事の進捗状況管理」だと思います。
誰が何を担当して、どこまで進んでいるのかを効率よく点検できる仕組みづくりもまた、リーダーの腕の見せ所化もしれませんね。

リーダーの皆さん、自分なりの点検事項、点検方法の工夫はできていますか?

次回は、3つ目の✅「メンバーを把握する、励ます」です。

『ありがとう…わたしはあの世へ、光の国へ』
みき まさよ (著) サトゥー 芳美 (イラスト)

文芸社

著者は看護師さんであり「看取り士」。現役の特養の副施設長としてもご活躍されていらっしゃいます。看護経験、介護現場での利用者さんからの関わりから、「本当の介護」を知っていただきたいという熱いお気持ちからの絵本だと思いました。

1ページ、1ページ、「命のしまい方」をちゃんと知っておかなければいけないと切に感じた1冊でした。

帯に記されている「今こそ伝えたい『平穏死』の素晴らしさ」ということば。
「老い」と「死」は普通で自然なこと。

中々伝えきれないことをやさしいタッチの絵本で伝えています。
核家族化で、人の死を見ることが少なくなったお子さんたちに是非、親御さんから伝えていただきたい1冊です。

第4波ともいわれる「COVID-19の猛威」が続くなか、今回は昨年度に開催された「シルバーリハビリ体操 全国オンラインフェスティバル」についてお伝えしたいと思います。

公益社団法人日本理学療法士協会は、厚生労働省の後援を得て、2021年2月8日(月)に「シルバーリハビリ体操 全国オンラインフェスティバル」を開催しました。本イベントは、全国各地で展開されていた介護予防事業がCOVID-19により中止を余儀なくされ、高齢者の不活動による心身への影響にとどまらず、医療崩壊とよばれる社会の状況の中で住民の自助・互助が妨げられている現状を鑑みて、やむにやまれなくなった全国の活動家たちの声がきっかけとなったと聞いています。

この背景には、日本理学療法士協会が数年間取り組んでききた住民主体型の介護予防事業の全国展開があります。茨城県立健康プラザ管理者である大田仁史氏(医学博士)が考案された「シルバーリハビリ体操」とその体操を用いたリハビリテーションの理念や介護予防の重要性および体操指導などを住民へ教育し、その住民が主体的に自治体と教室運営を行うシステムである「シルバーリハビリ体操指導士養成事業」があります。この事業を、茨城県内にとどまらず全国に展開するために、47都道府県理学療法士会からマネジャーを公募し、この仕組みの研修を行い、それぞれの都道府県および市区町村とともに事業を構築し、今では30以上の都道府県のどこかで開催されているのです。

その活動家のなかで、現在この業務を中心的になっている石川県の北谷正浩氏と石田修也氏は、COVID-19後にいち早く、厚生労働省および日本理学療法士協会の確認を得て新しい生活様式下での住民主体の介護予防事業の運営のガイドラインを作成されていました。

北谷正浩氏、石田修也氏が全国の専門家の活動家の皆さんに「オンラインで全国をつなげてみないか」という声掛けをして、活動家と自治体の皆さん、そして要請された住民の皆さんの力が結集されて実現したのでしょう。

短い準備期間と前例のない事業であるにもかかわらず、この時期に、北海道猿払村から沖縄県宮古島氏まで全国33市町村、700名以上の住民や行政職員の皆様が当日つながった光景には、目頭が熱くなる想いでした。

なぜ目頭が熱くなったか、です。昨今、あたかももっともな言葉を網羅し、できない理由を並べて「挑戦」ではなく「安全」な取り組みを志向することが当たり前のような、それが立派な行いのような世のなかの風潮がないでしょうか。今回33市町村の職員や住民が参加できる土壌を作っていた理学療法士の活動は、考えながら、動きながら作っていく新たな取り組みに何ひとつ不平を言わず、「どうしたらできるか」の視点で当日まで準備をしていたことに尽きるのではないでしょうか。

では、それがなぜできたのか。自分がやりたいではなく、住民の思いや行政の皆さんの思いを自分たちが動くことで役に立つことができるという、専門家としての高い予見性を持っていたからではないでしょうか。あるいは、その達成感をすでに会得している達人たちではないかと思います。案の定、当日画面で拝見した住民の皆様のお姿から私はエネルギーを得たのです。きっと参加していた皆様も同じでしょう。つまり、「住民の力」を感じたのです。

このイベントは、今後の全国の活動家の組織化につながるとともに、全国の住民を組織化していく可能性を感じています。「シルバーリハビリ体操」にとどまらない、全国の介護予防の取り組んでいる住民の力を引きだす組織を作り出すことが今後の大きな仕事になるでしょう。

執筆: 
斉藤 秀之(さいとう ひでゆき)
(回復期リハビリテーション病棟協会PTOTST委員会委員長 筑波大学グローバル教育院教授)

編集長です!

今年のゴールデンウィークも感染防止徹底ウィークになってしまいました。
一人ひとりの対策が新規感染の減少につながることを自覚すること、
これが医療従事者の皆様の負担軽減になるということの再認識が大切ですね。

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さて、一方で組織は日々動いています。新年度を迎え、新たにリーダーや主任など役割を任命された方々がたくさんいらっしゃると思います。
それぞれの組織では、リーダーに着任したスタッフさんにリーダーの役割を具体的に提示できているでしょうか。
実際のところ、「具体的な仕事」として提示できていることが少ないように思います。

3月31日は一般スタッフだった方が、4月1日付けでリーダーに着任すると、周囲はリーダーとして動いてくれるという期待の目で見ます。
だからこそ、具体的なリーダーの仕事、行動を伝えて着任させたいところですね。

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そこで、リーダーの役割と具体的な行動とはどんなことがあるのでしょうか。
次に示すのは、リーダーの5つの役割です。

 ✅ 方向性を示す
 ✅ 仕事の進捗状況を管理する
 ✅ 部下を把握する、励ます
 ✅ 模範となる
 ✅ 上司を補佐する

これだけを見ると、字面では理解できますが、具体的に何をすればよいのかさっぱりわかりません。
役割を行動に起こすことが大切です。

今回は、1つ目の✅ 方向性を示す についてお伝えしたいと思います。

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【方向性を示す】

中長期先に何をすべきかを示す、方針を決定して示すなど、ちょっと大それたことをしなければならないように思えてしまう役割です。
しかし、そんなことはありません。

 例えば・・・

 ✅ 今日やるべきこと、注意すること、一週間、一か月、半年、一年で取り組むことをメンバー全員の前で話す。(または、文書で配布する、掲示するもOK) 
 ✅ 問題が発生したとき、各メンバーがどのような対応をとるべきかを指示する。 
 ✅ 現在抱えているチームの課題、問題をメンバーに丁寧に説明する。

ということも「方向性を示す」のうちに入ると思います。
「示す」を具体的な行動のことばに置き換えて、実践してみるとよいと思います。
「今日も感染対策に気を付けて、それぞれの業務を行ってください」というのも方向性や方針です。
これを伝えることで、メンバーは「そうだ!ちゃんと気を付けないと」という気持ちで業務に着手すると思います。

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では、「方向性を示さない」とどうなるのでしょうか。
昨年の今頃も新型コロナ感染拡大の影響から、初めて全国で緊急事態宣言が発出されました。その後、解除されてからも感染が広がりつつあるとき、政府は明確な対策の方針を打ち出すことがありませんでした。
その結果、各都道府県の知事たちは政府に対して、「どうすればいいんだ」と詰め寄りました。

政府からの「方向性が示されない」ことから、各都道府県の知事たちが判断に迷ったという結果になったわけです。

メンバーが迷わないようにするために、リーダーは進むべき道を示すことが大切ですね!



「方向性が示されない」と、メンバーが迷うということなのです。迷うことは、行動が遅れ、仕事の遅れにつながり、サービスの低下を招いてしまうのです。
チームの成果は、サービスを求めている顧客(患者さん)に対して、満足のいくサービスを提供することです。それは医療も同じです。
だからこそ、メンバーが迷わないようにするために、チームとして何を大事に仕事をするのかをきちんと示す(話す、伝える)ことが大切なのです。

だからこそ、リーダーの大切な役割の一つと言えるわけですね。

次回は、2つ目の✅ 仕事の進捗状況を管理する です(^^)


全国でも先駆的な取り組みで有名な社会医療法人近森会の管理部長である寺田文彦氏のインタビューが実現いたしました。
高知駅前に位置する近森会。ホームページのキャッチは「一歩先の医療、一つ先の未来」。急性期から回復期、そして在宅医療まで担う地域になくてはならない近森会。また、回復期リハビリテーション病棟の礎となったことも、当時の「一歩先の医療」だったのだと。
今回は、ご多忙の中、寺田管理部長に近森会の沿革、地域の医療環境における近森会の役割や取り組み、そして法人としての人材育成の考え方をお話いただきました。

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◎寺田管理部長の所属の法人はこちら
社会医療法人近森会

◎寺田管理部長のプロフィール
<現職>
社会医療法人 近森会 管理部長

大学ご卒業後、1999年7月に医療法人近森会(現 社会医療法人近森会)企画情報室にご入職、電子カルテ導入に携わる。2003年7月近森リハビリテーション病院事務長にご就任し、医療機能評価受審の事務局を担当される。
2004年9月に法人本部へ異動され、診療支援部長に就任、DPC(診断群分類別包括評価)の準備に携わる。
2010年4月より新本館建設5か年計画のプロジェクトの事務局をご担当。
2012年1月に近森病院の医療機能評価更新(Ver1.0)、2013年1月に特定共同指導の事務局などをご担当し、2015年4月より現職に至る。

<ご経歴>
1967(昭和42)年12月18日 高知県生まれ
1990(平成2)年 3月 中央大学法学部 法律学科 卒業
1999(平成11年)7月  医療法人近森会 近森病院 企画情報室 入職
2003(平成15年)7月  医療法人近森会 近森リハビリテーション病院 事務長
2004(平成16年)9月  医療法人近森会 近森病院 診療支援部長
2015(平成27年)4月  社会医療法人近森会 管理部長
2016(平成28年)10月 社会医療法人近森会 常務理事兼管理部長
2016(平成28年)10月 医療法人松田会 常務理事
2018(平成30年)3月  社会福祉法人ファミーユ高知 常務理事

◎法人のご紹介、現在の県内・地域における役割、最近の法人としてのお取り組み等をお教えいただけますか。

現在、近森会グループでは、法人全体で792床を営んでおり、3つの病院に分かれています。
社会医療法人近森会 近森病院は、救命救急センターや地域医療支援病院、管理型臨床研修病院であり、災害拠点病院にもなっています。高度急性期病棟、急性期病棟、地域包括ケア病棟があります。

寺田氏ご提供資料

また、近森リハビリテーション病院は全床回復期リハビリテーションの建物で、もともと厚生労働省で回復期リハビリテーション病棟としての施設基準を作るときのモデルとなった病院です。現在は、脳卒中、脊損などを中心に治療しています。

寺田氏ご提供資料

医療法人松田会 近森オルソリハビリテーション病院は近隣の病院にベッドを譲っていただいた病院となります。
近森病院で整形の手術が年間1400件ほどあり、複数病院に早期転院していましたが、紹介元に患者さんが戻らない弊害があり、近森会グループで回復期リハビリテーションの対応をした後で、かかりつけの診療所にお渡しできないかとずっと考えていました。
たまたま譲っていただける病院があり、こちらでは運動器の回復期リハビリを行っています。

在宅系もあります。
在宅総合ケアセンターでは、1つの建物に老健施設や訪問看護、居宅介護支援事業所などが集合して連携をとっていました。2000年に介護保険の先駆けとして始めた建物でしたが、介護系サービスは高知県でも周りの施設ができるようになったので廃止して、現在は訪問看護や訪問リハビリに特化しています。

寺田氏ご提供資料

社会福祉法人は高知県から移管を受けたもので、3障害、いわゆる身体や精神、知的障害者の社会復帰、就労支援の施設となっています。
かつての措置費制度でやっていた時代は終わり、障害を持ちながらでも、出来るだけ就労復帰できる支援をしています。
これらが、グループ全体の活動になります。

高知県は人口が68万人で、年間8,000人が自然減少しています。圏域としては東西に長く、医療圏が4つあります。中央医療圏に7割の病院と医療スタッフが集中しており、それ以外は医療圏ごとに4万~8万人程度の人口しかいなく、今後20年間で労働生産人口が半減する地域です。

昨今、「病床の機能分化と連携」と言われますが、高知県は「機能分化と淘汰」の時代に入っています。

寺田氏ご提供資料

◎在宅リハビリに関しては、近森会でも進めていかれるのでしょうか。

当院の管轄である中央医療圏の範囲だと、退院した先にリハビリの機能がなければ、訪問リハや訪問看護へ行くことはあります。ただ、医療圏をまたいで2時間かけて往復することは難しいです。
介護保険は市町村単位になりますので、市町村の方でなるべく在宅に向けた看護師の要請や薬剤師、管理栄養士をという話になると思うのですが、今後は様々な職種が在宅に入って行く必要があると考えています。

高知県は人口当たりでベッドが非常に多く、全国平均の2倍あると言われています。特に、療養病床は3倍くらいあります。
2025年には急性期病床だと2000床多いとされていますが、地域包括病床が1000床足りないので、そちらへ移すことになります。しかし、それでも残りの1000床は余ってしまいます。
高齢化と人口減少、ベッド過剰が同時に進んでいる高知県が、地域医療計画のモデルを作らないといけない状況で、全国から注目されていると思います。在宅への推進は、ますます重要視されると思います。

寺田氏ご提供資料

◎チーム医療についてのお考えをお教えください。

当院はチーム医療の中でも、病棟常駐型のチーム医療をやっていまして、各スタッフが病棟専属で、お互いに情報共有を行い、各職種の目線で医療を展開しています。

よく、チーム医療の概念をきかれるのですが、各職種の仕事を分解し、やっていることを書き出しながら仕事を割り振って、今のチーム医療の形になってきたというイメージです。

チーム医療を行う上で、最近の新人は多様性がありますね。
昔は入って何年かは、その組織に従って馴染んでゆく形態でした。しかし、今は経験値こそ少ないのですが、早くから個人の意見を持っており、何よりも考え方に多様性があります。それを認めた上で1つの方向性を示してゆく必要があります。コ・メディカルの管理者(リーダー)が一番困っているところは、そこではないかと考えています。

繰り返しますが、いろんな意見を聞いてあげた上で、全体で進むべき方向性の指示を出してあげる必要があります。今は医療現場も転換期ですので、すべての指示を末端まで浸透させることは難しい時代になりました。一つの部署で50人程度ならトップダウンで監視することも可能ですが、職員が2,000人もいますし、人数の多い看護部やリハ部を中心に、それぞれのスタッフが自立・自動しなければ、現場の治療スピードが上がらず、ひいては労働生産性の向上に繋がりません。

高度急性期のステージですと、11日ほどで次のステージへ移っていくことになるので、若いスタッフにはまず、各部署で標準化したルーチン業務を覚えて欲しいですね。
やはり、患者さんをみて経験値を積んでいかないと自立・自動はできません。自分で患者さんをみて介入することを繰り返してもらい、専門性をあげてゆきます。専門性を上げていくと暗黙知、経験値のようなものが生まれてくるので、それを新人で入ってくる若手スタッフに実行して欲しいと思います。

寺田氏ご提供資料

今年は、コロナ禍で病院実習をほとんど受けずに入ってくる世代です。新人研修を例年以上に丁寧に始めることで、普段の研修とは違う形になると思いますが、逆に、コロナ世代に特有の、徹底した感染管理を指導された世代として頼もしく思います。

◎マネジメント研修についてのお考えをお教えください。

当院はこれまで、リーダー研修と主任研修、管理職研修を行ってきました。
医療業界に精通した講師がおられ、業界の先行きや医療業界で働くにあたってのイメージなどをご講義いただき、各研修の階層ごとに意見をフィードバックしていただくという方法でした。

また、航空会社の元客室乗務員だった講師からは、全国規模で他の研修をされていることもあり、他病院での具体的な事例もお話しいただきました。ゆとり世代に対しても、厳しい研修をしていただき、医療業界で働くとはこういうものだという基礎を教えて頂きました。

ただし、今回はコロナ禍が続き、オンライン研修が必要となりました。
時代に合わせて、新しい研修方法も考えていかないといけないと思っています。

◎リーダー育成という視点で課題があればお教えてください。

ゆとり世代の末期は個々の能力差が非常に大きいと思います。できる子とできない子の見極めを早めにしてあげる必要があります。
中学から大学受験まで競争がなく育った世代です。一方で、私たちやその少し下の世代では、友達が試験に落ちないと自分は受からないという世代でした。それが当たり前で来た世代が上司となり、部下はほとんど競争がなく、みんなで一緒に勉強してみんなで試験に受かろうという世代を教育する立場にいます。ただ、若いスタッフは横の情報網がすごく発達していて、みんなで一致団結して行動する形を取ります。あまり積極性がないのですが、上手く長所として捉えてもらいたいなと思います。

もう一つは、10年目以降はオールマイティーな管理職(マネージャー)になるケースと専門技術を突き詰める2つの方向があると思います。どの職種もそうですが、専門看護師や認定看護師といった各学会の専門資格を取得し、プロフェッショナルとして進みたいという人も出てくるでしょう。

だんだん年齢を重ねていくと、どちらの方向が向いているのか各自で考える時期があります。そのどちらも目指さない。つまり、何処かで成長が止まって中途半端になっている、異動もなくてこのまま定年までいけたら良いと思う人は、将来の病床削減の中では、医療現場で働けなくなってしまいます。中途半端なスタッフが仕事を失う時代がくると思います。

寺田氏ご提供資料

高度急性期、急性期病床は、今後治療する患者が限定されてゆきます。計算をすればどの職種がどれくらい必要かは分かってきます。現場は専門性が非常に高いですし、そうでなければ、チーム医療の中でやっていけません。その中で、若い世代がドロップアウトしていくということは実際にあると思います。

◎兼ね備えて欲しい視点などあればお教えください。

とにかく、高度急性期の世界は高度かつ重度医療を行います。専門性の高いスタッフと高度設備がないと治療行為ができません。

スタッフの質を担保していくために研修や教育があるので、その世代にあった教育の仕方を取り入れながら、全体としてきちんと質の確保をしていく。そこに関してはとにかく意識して、対応して欲しいと思います。

◎リーダーや管理職として、身につけてほしいスキルがあればお教えください。

バランス取れた人間性を持ち合わせていること。
部下よりいろんな相談を受けることになるので、自分さえ頑張っていれば良いという気持ちでは上手くいきません。主任は、それぞれの現場における実務リーダーですので、現場がうまく稼働する目線を持ち続けて欲しいと思います。

管理職になってくると、部署をまたいでいろんな連携が必要になります。技術指導はもちろんのこと、他部署との調整がうまくできる人が向いていると思います。

◎応援メッセージをお願いいたします。

医師の働き方改革につながるのですが、ドクターの仕事は早期に診断して根本治療をすることです。いろんな周辺業務があって資格上、全ての仕事ができるますが、とにかく数多くの患者さんをみることが最優先です。
ドクターが病院内のどこで勤務しているかと言えば、オペ室や内視鏡センター、カテ室やICUなどであって、一般病棟は朝回診して問題ないか確認をするくらいです。そのため、一般病棟はコ・メディカルが主力であり、退院までの道筋を作ることになります。

各コ・メディカルのステージで活躍の場は沢山あると思いますので、実力をつけて活躍できる場を広げて欲しいと思います。病院によってはドクターが仕事を渡してくれない場合もありますが、当院ではそういうことは一切ありませんので、チーム医療に参画できて、職種ごとの視点(看護学的、薬学的、栄養学的など)を広げて欲しいと思います。

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【インタビュー後記】

 寺田管理部長とお会いしたのは、10年ほど前だったかと思います。今回、寺田管理部長からお話がありましたとおり、近森会は高知県内での急性期医療から回復期、在宅という医療だけではなく、福祉の分野も手掛けていらっしゃいます。高知県内でこれだけの職員を雇用している法人はなく、県内の重要な雇用を担ってもいます。医療福祉だけではなく、雇用という点でも大きな役割のある法人だということを改めて実感いたしました。

 また、人材育成においても、長年の管理部門からでの視点で取り組まれていること、具体的にお話いただきました。こうして発展してこられた理由がわかったように思います。

 この度は、お忙しいところインタビューをお受けいただきありがとうございました。
 また、本インタビューにあたり、近森会総務課の小松さん、岡崎さんにも感謝申し上げます。

編集長 下田 静香

『新しい人事労務管理(第6版)』
佐藤博樹・藤村博之・八代充史(著)

有斐閣アルマ

組織において、「人」のことは様々な課題が日々発生しています。個人の課題に対してもですが、社会の変化による課題にも柔軟に、かつ迅速に対応することは人事担当者の使命と言えます。従業員の要望と組織の方針を擦り合わせながら、双方にとって充実の組織に作るためには、基本的な人事担当者としての知識や情報が必要です。

本書は、人事労務管理の基本的な考え方から、雇用管理、人事制度、賃金制度、労働時間管理、能力開発、非正規雇用他から、最新のダイバーシティの考え方など人事労務管理を網羅した1冊です。

実は、本サイト編集長の大学院の恩師が執筆されています。わかりやすく、実務直結の授業だったのと同様に大変わかりやすい表現で解説されている1冊でもあります。

人事労務を学ぶならこの本!
まさにおすすめの1冊です☆

山口県宇部市にある医療法人社団宇部興産中央病院の回復期病棟副主任の澤村健一さんにインタビューしました。
元々は宇部興産の企業立病院でしたが、現在は医療法人化し、ますます地域での重要な役割になっています。急性期から在宅医療までの機能を持ち、その中での回復期病棟でセラピストリーダーとしてご活躍の澤村さんから、病院の特長も含め、お話を伺いました。

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澤村さんの所属の病院はこちら
 医療法人社団宇部興産中央病院

澤村さんのプロフィール
<ご略歴>
 2001年 名城大学商学部商学科卒業
 2007年   下関リハビリテーション学院卒業(現:下関看護リハビリテーション学校)
  同年   宇部興産中央病院入職
 2015年 同病院 副主任

大学を卒業後、1年間 フリーターを経て、一般企業に入社。その後、理学療法士を目指し、専門学校へ入学いたしました。

<主な資格>
 2016年 介護予防推進リーダー、地域包括ケア推進リーダー、協会指定管理者(上級) 
 2017年   回復期リハビリテーション病棟協会セラピストマネジャー
      認定理学療法士(地域理学療法)
 2018年 認定理学療法士(管理・運営)
 2019年 認定理学療法士(臨床教育)
 2020年 フレイル予防人材育成研修プログラム

◎所属の病院、法人のご紹介をお願いいたします。

急性期がメインの病院ですが、地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟を設け、急性期の入院治療から在宅支援までを一貫して提供している病院です。予防の視点から、健診センターも備えています。

リハビリテーション室は、急性期グループは内科、外科、脳外科、整形外科、スポーツリハビリに分かれており、地域包括ケアグループ、回復期グループで構成されています。当院のリハビリテーション室の特徴は、スポーツリハビリと内科グループの心臓リハビリテーションです。

心臓リハビリテーションは、内科(循環器科)の患者さんがメインとなります。当院では、心肺運動負荷試験(CPX)を導入し、心疾患のある方に対して、どのくらいの運動負荷をかけてよいのか、自転車をこいでもらいながら、適切な運動量を計算しています。

心臓リハビリテーションを行うことで、心疾患による入院リスクが下がったり、生活の質が改善し、より快適な生活が過ごすことができるようになります。

当院では、入院中の患者さんだけでなく、退院後も外来通院で心臓リハビリテーションを行っております。

スポーツリハビリテーションは、私も数回、入院してお世話になった経験があるのですが、基本的には競技復帰が目的です。部活をやっている学生や社会人でスポーツをやっている方たちに向けて、入院から外来を通じて、競技復帰するまでフォローしており、当院でも、力を入れている部門の一つです。

「アスレチックトレーナー」という資格をもったスタッフが配属されており、よりスポーツに特化したリハビリテーションを行う場となっています。スポーツリハビリテーションは、サッカーやフットサル、バスケットボール、バレーボールといった競技の方が多いですね。

◎地域医療の視点での貴院の役割はいかがでしょうか。

当院は山口県宇部市にありますが、大学病院も同じく宇部市にあり、そこが最も急性期的な役割を担っています。当院は、その次の急性期としての役割を担っているのではないでしょうか。どちらかと言うと、市民病院のような働きになりますね。

◎澤村さんが、理学療法士になられた動機、きっかけを教えてください。

祖母が入院したことで、リハビリというものを何となく知ったのですが、その時には理学療法士と作業療法士の違いも全くわからず、リハビリについての認識だけでした。

理学療法士に就く前、私は民間企業の営業をしていました。

大学の商学部を卒業して、就職活動していたのですがなかなか決まらず、結局、行きたいところに行くことができませんでした。そして、1年間フリーターをした後に、民間企業に就職が決まり、2年ほど勤めました。

私自身、長らくサッカーをしていたのですが、一般企業に在籍していた頃に手のケガをして通院治療をすることになりました。その時に、「これが、リハビリなんだ」、「これが、理学療法士なんだ」とその存在を間近に見たことが、理学療法士を目指したきっかけです。

正直なところ、一般企業に在籍していた時はモヤモヤしながら仕事をしていたのですが、このタイミングでケガをして理学療法士という仕事を知り、「こんな仕事もあるんだ」と思っていました。すると、私が担当していた営業のエリアにリハビリの学校ができるという広告が出ているのを見かけました。そして、オープンキャンパスに参加し、色々と調べていく中で、その方向へ進んでいったという感じになります。2004年のことです。26歳にして、専門学校に入学しました。

実は、私たちの世代は、大学へ一度行って社会人を経験し、それを辞めて療法士になられた方が多いようです。

当院の回復期病棟の恩師である故岡村医師との2ショットだそうです。

◎リーダー(副主任)になりたてのとき、壁にぶつかったこと、それをどのように克服したのかをお教えください。

回復期病棟のグループリーダーになる前は、私よりも経験年数が上の先輩がいたのですが、その方たちは異動されてしまい、結果として、そのときの立場上、私が回復期のグループリーダーに任命されました。当時は、組織的に役職の立場や役割の条件等が明確にされておらず、なんとなくリーダーをしているという感じでした。

リーダーとして何をしてよいのかがわからなかったですし、特段、明文化されたものもなかったので、時間が過ぎていくうちに不安を感じるようになりました。日々、患者さんと向き合うだけでいいのかと思い、色々な勉強会へ参加しているうちに、回復期リハビリテーション病棟協会のセラピストマネジャーという存在を知りました。

そうは言っても、時間もお金もかかる研修ですし、どうすれば受講できるのかなど疑問に感じながら日々を過ごしていたのですが、既に受講されている山口県内の方にコンタクトを取って話を聞きに行くなどしていました。そして、ついに面談の時に上司へ相談したことがきっかけでセラピストマネジャーの研修に参加することができ、結果的にはそこが回復期のことを体系的に学べる機会となったり、全国各地に同じ志をもった仲間をもつことができました。マネジメントについても初めて学ぶことができ、それがリーダーとしての契機になったのだと思います。

入院中に徳山リハビリテーション病院の橋本さん(セラマネ同期)がお見舞いに来られた時の2ショット☆ いい仲間☺



◎澤村様がリーダーとして活動するとき、軸としていること、大事にしていることがあればお教えください。

病院は看護師、医師、介護士、社会福祉士や薬剤師、リハビリだけでも3職種いますし、多職種で成り立っているので、全体のバランスというか最適化が必要だと思っています。つまり、自分の部署だけを一番に考えず、他部署のことも考えて行動することを常々気を付けています。

具体的には、看護師さんに「(患者さんを)こういう感じで歩かせてくださいね」と言っても、看護師さんは看護の仕事やそのほかの対応で忙しいので、なかなか重度の患者さんと一緒に介助歩行してもらうことにリスクがあったり、時間的な制約があります。また、「(患者さんには)こういう環境でやってくださいね」と、リハビリとして様々な患者さんの活動を支援したいのですが、看護師さんのことを考えるとこちらが押し付ける感じにもなるので、時間帯や頻度は、病棟スタッフ目線で考えるなどしています。

◎リーダーとして、これだけは身に着けておいたほうがよい、経験しておいた方がよいと思うことをお教えください。

失敗から多くのことを学べるので、成功経験だけではいけないのかなと思っています。

また、リハビリは対人の仕事です。
患者さんも人ですし、スタッフも職種間の連携など常に人の対応が必要となるので、コミュニケーションの取り方や頻度が大切ですよね。
話をする、顔を見る頻度が上がるだけでも印象は変わりますので、苦手意識を抱いている人であっても積極的に話しかけるようにしています。

やはり、できるだけよい環境で仕事をしたいですし、そういう意味でもコミュニケーションの取り方は身につけておいたほうがよいと思っています。

◎澤村さんのリーダーとしてのお取組みとして、新人教育プログラムを構築したと伺っております。その運用はいかがですか。

2020年度は、理学療法の部門に3人の新入職員が入りまして、以前、作った新人教育のチェックリストを活用しました。

チェックリスト作成当初は、私が配属されている回復期グループだけで活用していましたが、現在は、回復期以外のグループにも配属がありましたので、そのグループでもチェックリストを活用して新人教育にあたっています。また、項目も部門によって必要なものや特異性がありますので、ブラッシュアップをしながら、不定期ではありますがフィードバックの話し合いをしつつ動かしているところです。

これまでは、そういうものが全くなかったのですが、今後は新人だけではなく、部門ローテーションの時も活用できたらよいかもしれないという話も出ています。新人の配属がない部署でも異動してきたスタッフに活用できるように試行中です。

全国のセラピストが集まる管理職研修でご自身が開発した新人教育プログラムをプレゼンする澤村さん。

◎それぞれの経験年数に応じての育成という考えの中で、プランなどお聞かせいただけますでしょうか。

私の中では、看護師さんのようにラダーのようなものが必要だと思っています。

なかなか、定期的に新入職員が入職してこないこともあって、着手しにくいところではありますが・・・。

また、ここ数年の新入職員はチェックリストを使って教育されていますので、先輩にあたる人たちにも何かしら目安となるものが必要だと思います。当院のリハビリテーション室は、中堅からベテランと言われるような経験年数が長いスタッフが多くいますので、振り返る機会というか、見える化はしたいですよね。

時間はかかりますが、今回のチェックリストも何とか展開できましたので、次のステップとして時間をかけ、ゆっくりとでも作れたらとは思っています。

◎これからのご自身のキャリアデザインをめざしたいことがあればお教えください。

自部署のことについて、徐々にでも形にできればよいと思っています。

また、私はグループリーダーの役割もあるため、スタッフよりも臨床の場は少なめではありますが、休みのスタッフが多い時などは、患者さんとしっかり向き合うようにしています。

◎最後に、自分を元気にしたいとき、どんなことをされていますか。

これまでサッカーやフットサルを長くしてきましたが、最近は怪我が多く、引退気味です。3、4か月に一度顔を出す程度ですが、メンバーと話をしたり、体を動かしたりすることが元気になれる場所でしょうか。幼稚園から一緒に過ごしてきたメンバーも多くいますので、気兼ねなく接することができます。

澤村さんが27年間活動してこられたフットサルチームJunjies futsal falmily宇部の皆さんとのショット⚽

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【インタビュー後記】

インタビューを終えて、澤村さんからひとこと。「こんな内容でインタビューになりますか」と。
いえいえ、セラピストになられたきかっけもしっかりとした動機があり、それが今の患者さんへの向き合い方、メンバーや他職種への向き合い方にも大きく影響していると感じました。また、新人教育プログラム開発では、当時その必要性を伺っており、現在こうして運用できていることが嬉しく思いました。
サッカーでのケガから始まり、理学療法士の道へ。きっと長年のサッカーでのチーム活動も今のチーム運営にいい影響が及んでいるんですね。
ますますのご活躍を期待しています☆
澤村さん、このたびはインタビューに応じてくだいましてありがとうございました(^^/